093 脱いで【購読お願い】

木村家を離れ、村上念美はしばらく迷った後、直接車で木村陽太が選んだ新しい会社の住所へ向かった。

人の頼みを受けたからには、誠実に行動すべきだ。

木村お母さんとの約束である以上、行動に移さなければならない。

実際、ずっと見に来たいと思っていた。

でも、邪魔をするのが怖かった。

ここに来ることで、自分の存在が彼の評判に悪影響を与えることは間違いない。

車を木村氏ビルの下に停め、村上念美は目の前の壮大な建物を見つめ、唇を噛んだ。

実は、この一帯の土地は以前木村陽太が購入したもので、後に木村氏のオフィスとして使用する予定だった。

しかし、人の計画は天の思惑にかなわず、当時自分が大崎市を離れてシアトルへ行き、木村陽太も自分について来た。

その後、この土地に木村陽太は建物を建てて不動産事業を始めようとしたが、思いがけず、三年後に完成し、木村陽太が帰国した際には、木村氏のビジネスビルとして役立つことになった。

思考が少し散漫になり、村上念美は携帯を取り出して木村陽太に電話をかけた。

呼び出し音の後、すぐに電話がつながった。

「念美?」

電話の向こうから木村陽太の声が聞こえ、自分からの電話かどうか疑っているようだった。

「木村陽太兄さん...私、木村氏ビルの下にいるんだけど、今時間ある?会えるかな?」

「うん、下で待っていて、すぐに行くから。」

彼の声は相変わらず温かく、まるで春風に包まれるような感覚で、村上念美は口元を緩めた。

「わかった。」

どうやら、木村陽太は自分の頼みを断ることはなく、彼は自分に対していつも何でも応えてくれる。

...

村上念美が電話を切ってからそう時間が経たないうちに、木村陽太が車の前に現れた。

木村陽太が窓をノックするのを見て、村上念美は彼に助手席に座るよう合図し、明るい笑顔を浮かべた。

「今日は気分がいいから、ご飯をおごることにしたの。木村陽太兄さん、何が食べたい?」

「うーん、火鍋かな、好きなんだ。」

火鍋?

どうやら木村陽太は自分と食事をするたびに、いつも火鍋を優先的に選ぶようだ。

自分は大好きだけど、彼が本当にそれほど好きなのかどうかはわからない。

村上念美は目を瞬かせ、その後首を振った。

「火鍋じゃなくてもいいよ、木村陽太兄さん、何が一番好きなの?」