木村家を離れ、村上念美はしばらく迷った後、直接車で木村陽太が選んだ新しい会社の住所へ向かった。
人の頼みを受けたからには、誠実に行動すべきだ。
木村お母さんとの約束である以上、行動に移さなければならない。
実際、ずっと見に来たいと思っていた。
でも、邪魔をするのが怖かった。
ここに来ることで、自分の存在が彼の評判に悪影響を与えることは間違いない。
車を木村氏ビルの下に停め、村上念美は目の前の壮大な建物を見つめ、唇を噛んだ。
実は、この一帯の土地は以前木村陽太が購入したもので、後に木村氏のオフィスとして使用する予定だった。
しかし、人の計画は天の思惑にかなわず、当時自分が大崎市を離れてシアトルへ行き、木村陽太も自分について来た。
その後、この土地に木村陽太は建物を建てて不動産事業を始めようとしたが、思いがけず、三年後に完成し、木村陽太が帰国した際には、木村氏のビジネスビルとして役立つことになった。