096 彼女を甘やかしすぎて見ていられない_2

誰も自分に言及したことがなかった...

村上念美は潤んだ瞳で、目尻の湿りを必死に押し戻した。

自分が帰国してから、藤原景裕が三年の間に一代で帝国を築き上げたことしか見ていなかった。

でも知らなかった...彼がかつて負傷して入院していたことを。

...

笹木愉伊の思考は遠くへ飛び、脳裏には消えない当時の鮮血が浮かんでいた。

藤原景裕の自責と絶望。

実際、あの新兵は相手の部隊にいて、責任について言えば、道理をわきまえた人なら誰でも藤原景裕のせいではないとわかる。

しかし総指揮官という役割を担っていた藤原景裕は、笹木静香の死について、ずっと自分が原因だと思っていた。

あの三ヶ月間、彼は傷の痛みだけでなく、精神的な苦痛にも耐えていた。

とにかく...簡単ではなかった。

実は...自分はもう彼を許している。

責任は彼にないと思っている。

結局、たとえ彼が正確に指揮をしていても、演習での銃撃戦の設計は避けられなかった。

あの新兵の手にあった本物の銃は、それでも人を傷つけ、殺していただろう。

それに、彼の実戦指揮は普段の高いレベルを発揮できなかっただけで、実際、その日も悪くはなかった。

...

笹木愉伊は遠くから視線を戻し、淡々と目の前の村上念美を見つめ、唇を引き締めて言った。「村上お嬢様、私の話を聞いて、本当に自分が彼に相応しいと思いますか?」

「もし本当に彼を愛しているなら、彼を傷つけないでください。」

村上念美:「...」

村上念美は笹木愉伊から、女性としての懇願を感じ取ることができた。

彼女は最初、自分と駆け引きするような意図があったが...

最後の一言では、姿勢を低くして懇願するようになった。

彼女の言葉は、深く自分の心に刻まれた。

「笹木...」

「村上お嬢様、あなたはこれまでに、二人がとても愛し合っていたけれど、今は一緒になれない、そんな感情を経験したことがありますか?一緒にいることで相手をより苦しめてしまうから、別れることが互いにとって最良の選択になるような。」

笹木愉伊の言葉は柔らかく漂うように、村上念美に言っているのか、それとも自分自身に言っているのかわからなかった。

村上念美:「...」

「言うべきことは言いました。よく考えてみてください。」