誰も自分に言及したことがなかった...
村上念美は潤んだ瞳で、目尻の湿りを必死に押し戻した。
自分が帰国してから、藤原景裕が三年の間に一代で帝国を築き上げたことしか見ていなかった。
でも知らなかった...彼がかつて負傷して入院していたことを。
...
笹木愉伊の思考は遠くへ飛び、脳裏には消えない当時の鮮血が浮かんでいた。
藤原景裕の自責と絶望。
実際、あの新兵は相手の部隊にいて、責任について言えば、道理をわきまえた人なら誰でも藤原景裕のせいではないとわかる。
しかし総指揮官という役割を担っていた藤原景裕は、笹木静香の死について、ずっと自分が原因だと思っていた。
あの三ヶ月間、彼は傷の痛みだけでなく、精神的な苦痛にも耐えていた。
とにかく...簡単ではなかった。
実は...自分はもう彼を許している。