堇顔

　藤原景裕と村上家の三女・念美は、誰もが知る幼なじみ。
　彼は幼い頃から彼女を溺愛し、婚約に至るのも当然の流れだった――はずが、念美は突然その婚約を破棄し、別の男性のもとへ海外へと旅立ってしまう。
　それから三年。
　念美が再び日本に戻ってきたとき、彼女はなんと藤原に「結婚して」と迫る。
　世間は騒然、「あの女はすぐに捨てられるに違いない」と噂が飛び交う。
　だが誰も知らなかった。藤原景裕がずっと前からすべてを仕組み、綿密に張り巡らせた罠によって彼女を呼び戻し、迎え入れ、そして――一生のぬくもりを与えると決めていたことを。

✦ 主人公同士は心も身体もピュアな1対1！
✦ 強い女×強い男、浮気もクズも一切ナシ！
✦ ドロドロや無理な虐待描写ナシ！
✦ ひたすら甘くて深い、極上の溺愛ラブストーリー！

愛は策略の中に

「無駄だよ...この薬の効き目が強すぎる、病院に着く前に我慢できなくなって狂ってしまうかもしれない。」


村上念美は美しい瞳を暗くした。ここには睡眠薬がない...どうしよう？


村上念美は震える声で言った：「少し時間をください、お酒を飲みたいの。」


藤原景裕は女性の目が泳ぐのを見て、村上念美が何を言っているのか理解していた。


彼女は恐怖に抵抗する方法を考えている...


酔いが回れば、彼女の心の防御も下がるだろう。


藤原景裕の喉仏が動き、限界まで我慢していたにもかかわらず、思わず逞しい腕を伸ばして小さな彼女を抱きしめた。


「必要ないよ...ただ抱きしめていたいだけ...抱きしめさせてくれればいい、君を傷つけたりしないから。」


男性に強く抱きしめられ、村上念美は心の中で心配せずにはいられなかった。


実際、村上念美もこのような状況は初めてだった。以前はニュースや新聞、テレビ、小説でこういったことを知っていただけで、まさか実生活で起こるとは思っていなかった。


また、藤原景裕が薬を盛られるなんて考えたこともなかった。


村上念美は唇を噛み、震える声で言った：「誰があなたに薬を盛ったの...どうして、ここは藤原氏の年次パーティーよ、誰があなたに薬を盛る勇気があるの？」


村上念美は取り乱し、その後表情が少し変わった。


「熊谷紗奈よ！彼女でしょ？あなたはさっき彼女と一緒に行ったわ...」


村上念美は賢い、このことを藤原景裕はよく知っていた。


村上念美は藤原景裕の沈黙を見て、ほぼ確信した。


「彼女はなぜあなたに薬を盛ったの？」


村上念美は必死に考え、今夜の村上氏のパーティーを思い出し、嘲笑した。


「今日、安藤萱子が姿を見せなかったことに気づいたわ。彼女は安藤萱子のために薬を盛ったのね？」


藤原景裕は否定せず、うなずいた。


村上念美は小さな手を握りしめ、美しい瞳に湿り気を帯びた。藤原景裕は彼女の息子なのに、彼がそんなことをするなんて...彼女はかろうじて理解できる。


でも彼女はなぜ藤原景裕にこんなことをするの？


109 あなたを我慢させたくない_2