村上念美は胸がドキドキと鳴り、素早く大広間の方向へ歩き始め、歩きながら携帯を取り出して藤原景裕に電話をかけた。
彼が警察署に来たのは何のため?あの時の事件のせい?
村上念美の瞳が一瞬揺れた。電話の向こう側はずっと繋がらなかった。
もし藤原景裕が本当に警察署にいるなら...おそらく電話に出る暇がないのだろう。
彼がここに来た目的は自分と同じなのだろうか?
「藤原奥様?藤原さんをお探しですか?」目ざとい警官が村上念美の身分を認識し、すぐに熱心に近づいて言った。
村上念美は口元に微笑みを浮かべた。警官のこの言葉を聞いて、ほぼ間違いなく藤原景裕がここにいることを確信した。
「はい、彼はどこにいますか?」
「藤原さんは取調室で供述を録取しています。」
村上念美:「...」
供述録取?
村上念美の瞳が一瞬揺れ、その後かすれた声で言った:「彼に会いに行ってもいいですか?」
「申し訳ありませんが...部外者は取調室に入ることはできません。それに、藤原さんと木下警官が中にいますので、邪魔することはできませんよ。」
「はい、わかりました。」
村上念美はうなずき、頭皮がちりちりとした。焦りを感じていたが、常識的なことはわかっていた。
「藤原奥様、少しこちらでお待ちになりませんか。」
村上念美はその言葉を聞いて、口元に薄い笑みを浮かべ、静かに言った:「結構です。私は自首しに来たのです。」
自首?
まさか。
聞き間違いじゃないか。
警官はその言葉に驚き、目の前の美しい女性を見つめ、村上念美が冗談を言っているようには見えない様子を見て、唾を飲み込んだ。
「藤原奥様、冗談ではないのですか。」
「いいえ。」
村上念美は淡々と言った:「私と藤原景裕が届け出た事件は同じものだと思います。」
「ですから、中に入って聞いてもらえませんか、私が入る資格があるかどうか。」
警官は怠ることができず、唾を飲み込み、すぐに言った:「少々お待ちください、上司に確認してきます。」
「はい。」
村上念美はうなずいた。間もなく、警官が自ら出てきて近づき言った:「藤原奥様、どうぞこちらへ...自首についてのお話を取調室でお聞かせください。」
「藤原さんがいる取調室です。」
「はい。」
村上念美はうなずき、傍らの相馬紗奈は表情を引き締めた。