留置場内:
以前、熊谷紗奈が孤児院のことを持ち出すと、熊谷徹朗と渡辺愛美はいつも心を痛めていた。
今回、熊谷徹朗と渡辺愛美は熊谷紗奈を見て、まるで見知らぬ人を見るかのようだった。
彼女はいつからこんな風に変わってしまったのか。
今や熊谷紗奈は完全に悪魔と化していた。
熊谷徹朗はその様子を見て怒鳴った:「もういい、もう孤児院のことを私の前で持ち出すな...それは私たちがあなたに対して負い目があることだが、あなたが村上念美にしたことと同列に語れるものではない。」
「確かに私たちはあなたに申し訳ないことをした。でも...あなたは村上念美に対してもっと酷いことをした。あなたは村上念美に与えた傷に対して代償を払うべきだ...」
「繰り返すが、私たちのあなたへの保護はここまでだ。」
熊谷紗奈:「...」
熊谷紗奈は熊谷徹朗と渡辺愛美が本当に自分を助けないと決意したことを知り、恐怖に震えた。
違う違う、何かがおかしい。
普通なら、自分が孤児院で捨てられた過去について話せば、彼らは必ず自分に譲歩するはずだ。
もしかして彼らは何かを発見したのだろうか?
いや、それはあり得ない。
熊谷紗奈はつばを飲み込み、渡辺愛美に目を向けて震える声で言った:「村上念美があなたたちの前で人心を惑わしたんでしょう?彼女の言うことなんて信じられないわ。」
「私はもうここにいられない。ここは人が居るべき場所じゃない。みんな目が見えていないのよ。私が誰か、どう扱うべきか全く分かっていない。お父さん、お母さん、早く私を助け出して。」
「それに...さっきたくさんのメディアが来たわ。今頃きっと外で私のスキャンダルを大々的に報道しているわ。私は少しの悪評も耐えられない。外の人たちに私のことをどう思わせるつもり?」
「早く私を出して、そして私の潔白を証明して。警察署の全員に私に謝らせるわ。」
渡辺愛美:「...」
熊谷徹朗:「...」
この熊谷紗奈はまさに夢物語を語っているようだ。
藤原大旦那様たちはその言葉を聞いて複雑な表情を浮かべ、熊谷紗奈に対する嫌悪感がさらに強まった。
村上翔偉と木下麻琳は大きな冗談を聞いたかのようだった。ふん...この女、死んで地獄に落ちればいい。
彼女がこれほど恐れを知らないのは、熊谷家と藤原家の権力を頼みにしているからに他ならない。