熊谷紗奈:「...」
心美という二文字に、熊谷紗奈の顔色が一気に青ざめた。
木下麻琳は紗奈の異変に気づかず、ただ彼女の体が強張っているのを感じただけだった。
「ただ...ただあの老夫婦の年齢を考えてあげてください。」
「そんなはずがない!」
「私...私は心美なんて人、全然知らないわ。あなたが嘘をついている、大げさに言っているだけよ。」
木下麻琳:「...」
なぜか、熊谷紗奈のこの言葉を聞いて、麻琳は直感的に女が嘘をついていると感じた。
彼女は絶対に知っているはずだ。
女の声が異常に震えていることからして、ただ助けたくないだけなのだろう。
人の心というのは本当に腹の中では分からないものだ。他人の実の父母の家に長い間居座っておきながら、今になって助けようともしない。まったく改心する気がないのだ。