まさか...この世の中にこんな偶然なことがあるなんて。
うん、本当に嫌だわ。
あんな人と同じ孤児院にいたなんて、村上念美は木下麻琳が熊谷紗奈にいじめられていたのではないかと心配した。
「お母さん...熊谷紗奈というような人物に印象はある?」
木下麻琳はじっくり考えて、躊躇いながら言った:「ないわ、これはもう40年以上も前のことだし、それに当時はみんなまだ10歳前後の子供だったから、何を覚えているというの。」
「じゃあ、熊谷紗奈と同じ年頃の女の子については、何か印象はある?」
木下麻琳はその言葉を聞いてしばらく考え、続けた:「実はね、一人だけいるわ、心美という子で、私より3歳ほど年上だったわ。」
「その年齢は合わないんじゃない?でも、あの戦乱の時代で、食べ物も着る物も十分になくて、体の発育と実際の年齢は一致していなかったわね。」
村上念美:「...」
それは確かにそうだ。
年齢は大きく見えるのに、発育が良くなくて、痩せて小さい人もいる。
ある人は、食べ物が良かったから...背が高く、年上に見えることもある。
「さっき病院に行って、熊谷紗奈に心美についての印象を聞こうと思ったの。だって、あれだけ長い間お嬢様になりすましていたんだから、少しは良心があって、役立つ情報をくれるかもしれないと思って。熊谷大旦那様と奥様がお嬢様を見つける手助けになればと思ったんだけど、結局彼女は、どうしても話そうとしなかったわ。この人がどうしてこんなにひどい人間になれるのかしら。」
村上念美:「...」
予想通りだ。
なりすましができるような人間は、当然良心などないのだろう。
どうして人探しを手伝うだろうか。
「お母さん...彼女はそういう人よ、気にしないで。」
「うん、そうね...ただ景裕が気の毒で。」
村上念美はその言葉を聞いて口元を上げ、思わず言った:「そうね、お姑さんが娘婿を心配してるのね、見れば見るほど心配になるわ。」
木下麻琳はすぐに手を振って、「そんなことないわ...この藤原家は、あんなに権力があって、あなたがここで苦労するのが忍びないだけ...」
村上念美は木下麻琳の心の中で藤原景裕に対してまだ少し不満があることを知っていた。うん、それを和らげるには時間が必要だろう。