もともと何年も別居していて、感情的には名ばかりの関係だった。
すべては既に存在しなくなっていた...
だから今は、思い切って混乱を断ち切り、すべてを早く終わらせるだけだ。
木下麻琳と村上翔偉はそれを聞いて心を動かされ、麻琳は思わず申し訳なさそうに口を開いた。「大旦那様、こんな重要なことを私たちに話してくださるなんて思いもしませんでした。私...最初に来たときは、あなたに対して態度が良くなかったです。」
「そんなことはどうってことないよ。麻琳さんと村上君は、藤原陽と同じように、私の子どもたちだよ。これは家族の問題だから、ただの家族の話し合いだと思ってくれればいい...私が望むのは、あなたたちが藤原家に少し時間をくれることだ。特権を使えば...いつでも念美の件を解決できるが、念美が無実なら、なぜ数日間辛抱して司法手続きを待ち、念美に最も公平で公正な判決を与えないのだろうか。」
藤原大旦那様の言葉は、木下麻琳と村上翔偉の心を深く温めた。
麻琳は目を赤くしてうなずいた。「大旦那様、お言葉に従います...」
「そうですね、大旦那様。私たちは藤原家を、景裕を信じています。」
村上翔偉は自ら麻琳を抱きしめ、そっと言った。「麻琳...もういいよ、泣かないで。」
「うん。」
麻琳はうなずき、赤い目で震える声で言った。「私はずっとこの熊谷紗奈が権力者だと心配していたの。うちの念美は彼女に3年以上もいじめられて、ずっと心が晴れなかった。今、彼女はまだ最終的な罰を受けていないけど、当然の報いが来た...ただ感慨深いわ、この世界は本当に公平なんだって。」
「君は本当に馬鹿だね...」
村上翔偉は心配そうに手を伸ばし、麻琳の手からティッシュを取って彼女の目尻の涙を拭いた。
「もういいよ...大旦那様の前で笑い者にならないで。」
「うんうん。」
麻琳はうなずいた。
藤原大旦那様は村上翔偉と木下麻琳がこれほど愛し合っている様子を見て、心に感慨を覚えた。
この麻琳は村上翔偉と共に無一文から始め、懸命に努力して、ついに成功を収めた...この夫婦は苦労を経験したが、とても愛し合っている。
この藤原陽と熊谷紗奈...二人とも権力者の子で、人々の目には才色兼備の理想的なカップルに見える。
実際には、何年も結婚しているが、感情的には名ばかりの関係だった。