救急室の外:
大きな恐怖の後に大きな喜びとは何か、木下麻琳はようやくそれを実感した。
さっきまで恐怖で魂が抜けたようだったのに。
今は...計り知れない喜びに浸って抜け出せない。
まだ信じられないけれど。
まさか...熊谷徹朗と渡辺愛美が自分の実の両親だったなんて。
以前は、彼らに対して少し不満を持っていた。
結局、熊谷紗奈のことについて、彼らは甘やかして守り、村上念美を傷つけていたのだから。
なんて皮肉なことだろう。
彼らが必死に守っていたのは実の娘ではなく、守る過程で実の娘と孫娘を傷つけていたのだ。
...
木下警官の言葉を聞いて、渡辺愛美は震える手で熊谷徹朗の腕をつかみ、喜びと信じられない気持ちで声を震わせて言った:「熊谷、私、聞き間違えてない?今、木下警官は何て言ったの?」
渡辺愛美の涙は止まらず、声も激しく震えていた。
この幸せはあまりにも突然で、信じられないほどだった。
熊谷徹朗:「...」
熊谷徹朗は我に返った。人生で多くの大きな場面を経験してきたが、この瞬間は心の震えを隠せなかった。
「私も...はっきり聞こえなかった、私...木下警官...もう一度言ってくれませんか。」
木下警官はすぐに口を開いた:「熊谷大旦那様、奥様、検査結果が出ました。藤原奥様は、あなた方と血縁関係があります。あなた方の実の孫娘です。」
老夫婦があまりにも興奮しすぎないように、木下警官はさらに付け加えた:「つまり、木下麻琳さんはあなた方の実の娘です...本当の熊谷家の娘なのです。」
熊谷徹朗:「...」
木下麻琳:「...」
声にならないほど泣いていた。
複雑な感情が老夫婦の心を覆い、消えることはなかった。
なんて素晴らしいことだろう。
本当に天の恵みだ。
「熊谷、私を麻琳のところへ連れて行って、私の麻琳よ。」
「ああ、もちろん...」
熊谷徹朗は渡辺愛美を支えて震える体で立ち上がり、木下麻琳のいる方へ歩き始めた...
木下麻琳はまだ頭がくらくらする状態で、現実に戻れていなかった。
村上翔偉は喜びに満ちていた。まさか...木下麻琳が実の両親を見つけるとは。
しかも、その実の両親が木下麻琳がずっと尊敬していた熊谷大旦那様と奥様だなんて。
これは本当に大きな偶然だった。
...
「麻琳...私の麻琳。」