「お腹いっぱいだし、用事があるから先に失礼するわ...ごゆっくり」
そう言って、相馬紗奈は立ち上がった。「すみません、続けてください」
沢田恒夫は紗奈が帰ろうとするのを見て、すぐに立ち上がり、表情を変えた。
「紗奈...どうして急に帰るんだい...まだ食事も終わってないのに」
「もう十分食べたわ」
相馬紗奈は自ら言った。
服部社長もその様子を見て立ち上がり、心の中は名残惜しさでいっぱいだった。
表面上は食事をしていたが、実際には既に女性に魂を奪われていたのだ。
こんな正真正銘の小悪魔を、ただ遠くから眺めるだけで手に入れられないなんて。
「すみません、お食事の邪魔をしてしまって...送らなくて結構です、自分で帰れますから」
相馬紗奈は口元に形式的な笑みを浮かべ、そのままバッグを手に取り出口へ向かい、全員の見送りを断った。