「お腹いっぱいだし、用事があるから先に失礼するわ...ごゆっくり」
そう言って、相馬紗奈は立ち上がった。「すみません、続けてください」
沢田恒夫は紗奈が帰ろうとするのを見て、すぐに立ち上がり、表情を変えた。
「紗奈...どうして急に帰るんだい...まだ食事も終わってないのに」
「もう十分食べたわ」
相馬紗奈は自ら言った。
服部社長もその様子を見て立ち上がり、心の中は名残惜しさでいっぱいだった。
表面上は食事をしていたが、実際には既に女性に魂を奪われていたのだ。
こんな正真正銘の小悪魔を、ただ遠くから眺めるだけで手に入れられないなんて。
「すみません、お食事の邪魔をしてしまって...送らなくて結構です、自分で帰れますから」
相馬紗奈は口元に形式的な笑みを浮かべ、そのままバッグを手に取り出口へ向かい、全員の見送りを断った。
...
沢田恒夫は服部社長がまだ色めき立った目で紗奈の去った方向を見ているのを見て、急いで言った。「実は、この紗奈は私の長年はぐれていた娘なんですよ...」
「なんだって?」
沢田恒夫の予想外の言葉に、服部社長は心臓が飛び出しそうになった。
あまりにも突然すぎる。
「本当なんです、DNAも調べました、間違いなく事実です。これは長い話なんですが...ああ、過去の話に関わることで」
「彼女はね、小さい頃からシアトルで育ったんですよ、れっきとした心理医で、とても優秀なんです」
「シアトルってどこ?どの省にあるの?」
沢田黛璃:「...」
こういう人が本当に嫌い...
頭の中はお金のことしかない。
「服部社長、シアトルはアメリカの州です」
「ああ...アメリカか...」
服部社長は目を見開き、そして思わず口を開いた。「それはすごいね、だから彼女があんなに気品があって、教養があって...そして美しいわけだ」
服部社長は心の中で相馬紗奈の評価をさらに上げた。
清水香織はその様子を見て、続けて言った。「あのね...服部社長、お願いがあるんですが、ぜひ聞いてください」
服部社長は清水香織の言葉を聞いて、手を振り、自分の胸を叩いた。
「問題ありません、おばさん、言ってください、私たちはもうすぐ一家になるんですから」
服部社長はまさか、こんなに美しい義理の姉ができるとは思ってもみなかった。