沢田黛璃:「...」
物事は自分に有利な方向に展開しているにもかかわらず。
沢田黛璃の気分は良くなかった。
この服部社長が、まさかあんなに相馬紗奈を気に入るなんて。
しかも、さらに1000万を追加するなんて。
つまり、合計2000万の結納金だ...
すごい額だ...
この相馬紗奈の価値は自分の倍じゃないか。
沢田黛璃はむかついて仕方がなかった。
...
服部社長は今日ご機嫌で、つい何杯も酒を飲んでいた。
沢田黛璃は服部社長の隣に座っていたので、当然男からのセクハラを受けることになった...
沢田黛璃は内心嫌悪感でいっぱいだったが、拒絶することもできず、ただ服部社長の大きな手が自分の太ももを触り回すのを我慢するしかなかった。
そして服部社長は股間まで触ってきた...
くそったれ。
この老いぼれスケベ...
沢田黛璃は気持ち悪くて吐き気がしたが、接待する女のように笑顔で相槌を打つしかなかった。
服部社長の大きな手は酔った勢いで沢田黛璃の腰を何度も撫で回した。
...
沢田恒夫と清水香織は服部社長の行動を見ていたが、言いたくても言えなかった。
少し迷った後、まあいいか...見て見ぬふりをしよう。
服部社長が2000万くれるんだから仕方ない。
それに、服部社長は他に何もしていない...ただ触っているだけだ。
2000万のためなら、我慢するしかない。
...
車内:
相馬紗奈はイヤホンをつけていた。実は、彼女が残していったボタンは小型録音装置だった。
だから、自分が帰った後の沢田家の人々の会話をはっきりと聞くことができた。
相馬紗奈の口元に冷たい笑みが浮かんだ。
やはり見合いの席は罠だったな。
沢田家の人々は自分をあの服部社長に嫁がせようとしている...
そして結納金は...1000万。
いや、前の1000万と合わせると、正確には2000万だ。
まさか、自分がそんなに価値があるとは思わなかった。
ふん...
わかったよ。
私を探し出したのは、親愛の情からではなく、金目当てだったんだな。
...
その後の沢田家の会話は乾杯や社交辞令が中心で、その後は食卓を片付ける音や、キッチンで使用人が洗い物をする音が聞こえた。
相馬紗奈はボタンが片付けられ、ゴミ箱に捨てられたのだろうと推測した。