彼女には5人の婚約者がいる

「うわ、アオピエがまた炎上してる。今回は人を殺したらしい……」

「誰を殺したの？」

「生まれてない赤ちゃんだよ。前に彼女が殴った女性が、実は妊婦で流産しちゃったんだ」

「ちっ、今回もアオピエはお爺さんに尻拭いしてもらうつもりか。こんな孫娘なら早く始末した方がいいな」

……

青木朝音（あおき　あさね）は耳が良かったので、トイレに座っていても、リビングで四人の男たちが彼女の「殺人事件」について激しく議論しているのがはっきり聞こえた。

信じられないかもしれないが、実は彼女は三年間消えていたのだ。

三年前、彼女は任務で異世界を巡るプログラムに参加し、今日やっと戻ってきたが、時間はすでに三年後になっていた。

もっと恐ろしいのは、この三年間のあいだに、誰かが彼女の体を乗っ取り、彼女になりすましていたことだった。

しかも、一気に五人もの婚約者ができていた！

五人よ、五人……うん、外にいたあの四人のポンコツたちのことね。

もう一人は正体不明で、とても神秘的で、一度も姿を現したことがないらしい。

占い師に短命の相で20歳まで生きられないと言われ、その厄を解くには二つの方法しかないとのこと。

一つは毎日休まず金を使って災いを避けること、もう一つは金の気を強く持つ相性ぴったりの男を見つけること。しかも、多ければ多いほどいいらしい。

そして彼らを朝音の名目上の婚約者にし、同じ家に住まわせる。彼らが毎日お金を使えば、同様に彼女の災いを防ぐことができるという。

彼女が無事に20歳の誕生日を迎えられれば、婚約を解消できる。

偶然にも、これらの男性たちの家族はちょうど青木家と代々の付き合いがあった。

特に各家のお爺様たちの間柄は深く、よくゲームを一緒にプレイしていた。

簡単に言えば、彼らは自分の祖父にハメられたのだ。

何度も脅されたり誘導されたりして、やむを得ずこの頼みを引き受けることになった。

残念なことに、侵入者はイケメンに夢中なバカ女。おまけにファッションセンスも終わってて、まるで平成初期のヴィジュアル系。

元々の黒髪を七色に染め上げ、まるでクジャクが羽を広げたみたい。さらに厚くて濃いつけまつげのキャットアイメイクで、もう目に優しくないって。

こんな恐ろしい姿なのに、彼女は極度の自己陶酔に陥り、自分がモテると思い込み、男に擦り寄るのが好きだった。

特に最近は同い年の婚約者、五人の中で最も若くてクールな男に夢中になっていた。名前は厳谷君彦（いわや　なおひこ）、今年18歳だ。

残念ながら彼は第一高校のエリート学生で、学校一のイケメンとして有名人だった。どうして底辺の専門高校に通う痛い系の女子なんかに興味を持つだろうか？

あの奇抜すぎるファッションだけでも、ドン引きレベルだ。

しかし彼女には全く自覚がなく、毎朝早起きして君彦に愛情たっぷりのお弁当を作っていた。

ラブレターを書いたり、プレゼントを贈ったり、公の場で告白したりもしたが、向こうは全く相手にせず、疫病神のように彼女を避け、極度に嫌っていた。

それでも彼女は相手が恥ずかしがっているだけだと思い込み、さらに積極的になった。

やがて、君彦が好きな人がいることに気づいた。その相手は自分の義理の妹、青木愛茉（あおき　あいま）だった。

二人は天が結んだ運命のカップルと言えるほど、高い容姿と知性を持つ優等生で、同じクラスだったため仲も良かった。

それでも彼女は諦めず、しょっちゅう愛茉に嫌がらせをした。

卑劣な手段を使って愛茉を陥れようとしたが、あまりにも愚かで、毎回反撃され、全く太刀打ちできなかった。

評判は悪くなる一方で、婚約者たちも彼女を避けるようになり、嫌悪感と反感は日に日に増していき、彼女を見ると食事も喉を通らないほどだった。

先日、既婚男性を誘惑し、拒否されて怒り、相手の妻を殴ったという噂が広まった。

悪いことに、その女性は妊婦で、妊娠三ヶ月以上だったが、お腹はまだ目立っていなかった。

侵入者も彼女が妊娠していることを知らず、髪を掴んで平手打ちを浴びせた。

当時この事件は大きな騒ぎになり、誰かが動画を撮ってネットにアップし、騒ぎになった。

朝音のSNSアカウントが特定され、瞬く間に炎上し、あらゆる方面から非難と罵倒を浴びた。

この件で学校から重い処分を受け、校長が青木大旦那様の顔を立てなければ、とっくに退学処分になっていただろう。

しかし今日、その女性の子供が流産してしまった。

これは熱い油に水滴が落ちたようなもので、一気に爆発した！

見なくても分かる、彼女は今ネット上で攻撃的な言葉を受け、民衆の怒りを買い、全国民から非難されている！

すでに「殺人犯」というレッテルを貼られ、同時に「誰とでも寝る安い女」という称号も付けられていた。

ネットいじめがいかに恐ろしいか、人を潰すのに十分だ。

幸いなことに、今の朝音はすでに鋼のような心を鍛え上げており、このような世論の圧力など全く気にしていなかった。

幸いなことに、朝音の脳内には侵入者の記憶が残っていて、事件の経緯と真相を把握していた。

簡単に言えば、彼女は陥れられたのだ。

脳内の混乱した記憶を消化した後、朝音はイライラして眉間をつまんだ。

ほんと、どうかしてるだろこの世界……

彼女が最も嫌うのはトラブルだった！

でも大丈夫——

彼女！自分の殻を破った！青木朝音！

風に乗り波を砕き、王者の帰還だ！