第20章 ピアノの大家を打ち負かし、男主人公の登場(4)

ゴミ?

彼女のピアノ譜をゴミだと言うなんて?

この世界で人気がなくても、決してゴミではないはずだ。

知っておくべきことだが、これは彼女が最後の終末世界で自ら作曲した終末シリーズで、全部で三曲ある。

当時は大ヒットしたんだ!

彼女がピアノを弾くと、ゾンビがすぐに退散すると言われていたが、これは決して誇張ではない。

異能力をその中に融合させれば、五曲全てが極めて高い殺傷力を持ち、神をも仏をも殺すほどの威力があった……

しかし今、彼女の曲は嫌われ、さらにはゴミだと罵られている。

青木朝音は思わず苦笑いし、片手をポケットに入れ、もう片方の手で精巧なライターを持ち、習慣的に弄んでいた。

捲り上げた袖口から覗く細長く白い手首が、とても目を引いた。

その手首には画面が真っ黒なスマートウォッチが装着されていた。

長いまつげを伏せ、彼女の目の中の感情は見えなかったが、その動作には傲慢で奔放な雰囲気が漂っていた。

ふと顔を上げると、内側に曲がり外側に跳ねる桃花眼に、意味深な笑みが浮かんでいた。

突然、彼女は無造作に唇を開き、嘲笑うように言った。「本当にそう思う?」

隣にいた青木愛茉は目に浮かぶ他人の不幸を喜ぶ感情を隠し、わざと声を出して言った。

「長谷おじさん、お姉ちゃんを責めないでください。実は姉はピアノをあまり理解していなくて、今回はたぶん一時の思いつきで、他の人の真似をして作曲して遊んだだけなんです。上手く作れなかったのは仕方ないので、気にしないでください。」

青木愛茉は甘くて可愛らしい顔立ちで、声も骨の髄まで柔らかく甘かったが、この発言によって、逆に長谷進司の眉をさらに嫌悪感で顰めさせた。

ピアノを理解していないのに他人の真似をして作曲しようとするなんて、そもそも彼女はどこからそんな自信を持って彼に接触してきたのか?

もし彼がこのレベルのピアノ譜に興味を持てるなら、とっくの昔に自分で山ほど作曲していただろう。

「もういい、これ以上私の時間を無駄にしないでくれ。君の曲には興味がない。楽譜を持って出て行ってくれ。」

長谷進司はなんと傲慢な人物だろう。若くして人生の頂点に達し、周りにはほとんど阿諛追従する者ばかり。

青木朝音のような彼に対して軽薄な態度を取る人間に出会ったことがなかった。しかも彼女は無能な娘で、まさに天の高さも地の深さも知らないとはこのことだ!

彼は手に取ったその楽譜を、紳士的な態度も見せずに彼女に投げつけ、声も非常にいらだたしく、さらには嫌悪感に満ちていて、まるでハエを追い払うかのようだった。

青木朝音は平静を装うことができたが、この時ばかりは顔色を沈めずにはいられなかった。

身をかがめて床から楽譜を拾い上げ、存在しないほこりを払いながら、唇の端に冷たく嘲笑的な弧を描いた。

口を開こうとした瞬間、一つの声が突然割り込んできた。それは入り口から響いてきた——

「ふん、我らが名高き長谷師匠が、こんなに紳士的な態度に欠けるとは。一人の少女をいじめるなんて……本当に目を見張るものがあるね。」

「私はあの曲はまだ悪くないと思うよ。『ゴミ』という言葉は確かに当てはまらない。」

この低音で磁性のある魅力的な声……

青木朝音と青木愛茉の表情が一瞬凍りつき、二人はほぼ同時に振り返り、声のする方を見た。

そこには非常に美しく、精巧で立体的な顔立ちの若い男性がいた。

どこか見覚えがある……

彼は腕を組み、ドア枠に斜めに寄りかかり、口元には意地悪な笑みを浮かべ、その姿勢は散漫で自由奔放だった。

しかし青木朝音の顔が振り向いた時、肉眼でも見て取れるほど、魅惑的でだらしない姿勢が急に引き締まり、すぐに体を真っ直ぐに立てた。

瞬時に、瞳孔が震え、濃厚な喜びが溢れ出した。

母上様。

ああああ、本当に母上様だ……なんてこと!