第22章 ピアノの巨匠を打ち負かし、男主人公の登場（6）

「えっ？」

北川信望はまだ母上様に会えた喜びに浸っていて、しばらく我に返らず、彼の言葉をはっきりと聞き取れなかったが、彼の視線の先を見ると、自分の目も熱を帯びた。

うーん〜母上様の小さな手は白くて美しい、いつも禁欲的で目が高い松陰様が惹かれるのも無理はない。

しかし瞬時に、北川信望は強い危機感を覚えた：やばい！また誰かが俺から母上様を奪おうとしている！

たとえ親友であっても譲れない！

青木愛茉はさっきまであの方を見つめて呆然としていたが、我に返ると、二人のイケメンが青木朝音を見つめていて、自分には一瞥もくれないことに気づいた。

たちまち爪を掌に食い込ませた。

自分の存在感をアピールする必要があると感じた。結局、天才は自分であり、青木朝音はただの無能だ。賢い人なら誰を選ぶべきか分かるはずだ。

しかし口を開く前に、長谷進司の声が響いた：

「北川信望？なぜここにいるんだ？」

長谷進司は明らかに北川信望を知っていた。結局のところ、北川信望は音楽界のスターであり、以前にも二人は接点があったが、あまり親しくはなかった。

今会って、長谷進司は少し驚いた様子で、思わず眉をひそめた。

「なんだその言い方は、ホテルはお前の家じゃないだろう、なぜ俺がここにいちゃいけないんだ？」

北川信望の無関心な態度と怠惰な口調は、どこか腹立たしさを感じさせた。

彼は青木朝音から視線を移し、眉を上げて長谷進司を見つめ、傲慢で軽蔑的な雰囲気を漂わせた。

「さっきあの曲は『ゴミ』じゃないと言ったな、もしかして気に入ったのか？」

長谷進司は嘲笑を含んだ目で見た。歌手はあくまで歌手であり、ピアノに関しては入門レベルに過ぎず、全くプロではない。

北川信望は彼に答えず、片手をポケットに入れ、青木朝音に向かって歩き出した……

その姿は優雅で落ち着いているように見えたが、実際には、彼がどれほど緊張していたかは神のみぞ知る。手のひらは汗ばみ、よく見れば、彼の歩き方はどこか不自然だった。

青木朝音に近づくほど、彼はますます緊張し興奮した。まるで心臓が喉から飛び出しそうだった。

わずか数歩の距離なのに、まるで数世紀を歩いているかのようで、ようやく母上様の前にたどり着いた。