第36章

青木誠司はこの時家にいて、ちょうど風呂から上がったところで、WeChatの送金通知を見て、しばらく呆然としていた。考えた末、受け取りをタップした。

【どういう意味?】青木誠司は尋ねた。

【あなたへのお小遣いよ。これからは青木愛茉にお金を無心しないで。】

送信した後、さらに一言追加した。【これからお金がなくなったら私に言えばいいわ。】

青木朝音はスマホをポケットに戻し、地下格闘場から出て行った。

深井鷹行はよろめきながら彼女の後を追った。「朝音さん、送っていこうか?車持ってるよ」

青木朝音は振り向きもせず、容赦なく言い放った。「あなたのボロ車なんて、やめておきなさい」

深井鷹行は納得がいかない様子で言った。「俺のバイクは当時30万円もかけて買ったんだぞ。今は少し古くなったけど、スピードも安全性能も問題ないよ」

「でももうすぐ新しいのを買えるんだ。バイクを買うためじゃなかったら、こんな闇の格闘技なんかやるもんか」

青木朝音は足を止め、横を向いて彼を見た。「あなたが闇の格闘技をやっているのは、お金を稼いでバイクを買うため?」

「そうだよ」深井鷹行はうなずいた。

新発売のバイクが50万円以上もして、ちょうど家からの経済制裁を受けていたから、ここで闇の格闘技をやるよう紹介されたのだった。

「あなた、どうかしてるわね」

青木朝音は彼を叱りつけようと思ったが、この男は終末世界の弟に似ているだけで、同一人物ではないと思い直し、言葉を飲み込んだ。

「へへ、朝音さん、タバコ吸う?」

深井鷹行は腫れた鼻をさすりながら、彼女が立ち去ろうとするのを見て、再び足を引きずりながら追いかけ、タバコを取り出して青木朝音に一本差し出し、自分も一本くわえた。

「吸わない」青木朝音は振り向きもせずに足早に歩いた。

深井鷹行はその場に立ち尽くし、遠ざかる背中を複雑な眼差しで見つめていた。ちょうど振り返ると、向井涼太と厳谷究が出てくるのが見えた。

「深井家の坊や、さっきの子は彼女?」向井涼太は親しげに彼の肩に腕をかけ、にこやかに尋ねた。

深井鷹行は少し呆然として首を振った。「違うよ」

「じゃあ彼女は……」

「姉貴だよ」

「ああ、お姉さんか、いいねいいね」