第55章 厳谷究は妖精さんに会った

秦隠が毎日偶然の出会いを考えているだけでなく、もう一人、前回のあの妖精さんといつ偶然出会えるかと考えている人がいた。

「妖精さん」が権州第一高校に通っていると聞いた厳谷究は、ほぼ毎日車でこの辺りを回っては、彼女に再会できないかと探し回っていた。そのせいでここ数日は心ここにあらずで、ろくに眠れていなかった。

直接学校に彼女を探しに行こうとも思ったが、それではあまりにも唐突すぎると感じ、むしろ偶然を装った出会いの方がいいと思った。

助手席に座っている向井涼太は、からかうように頭を傾げて彼を見て、冗談めかして言った。「まいったな、厳谷兄さんは恋煩いにかかってしまったんじゃないか？」

ちょうどその時、前方の角に白い影がちらりと見えた。厳谷究は見逃したが、向井涼太が見つけて、すぐに叫んだ——

「お前の妖精さんだ！」

「どこだ？」

厳谷究はすぐに精神が引き締まり、声は特に切迫して興奮していた。

「前だよ、今白い影を見たんだ。とても美しくて、まるで妖精のようだった。」向井涼太も非常に興奮しているようだった。彼は本当に見たのだ。

彼がこれほど興奮しているのを見て、厳谷究は彼が嘘をついていないことを知り、すぐに喜びに満ちて車を路肩に停め、ドアを開けて素早く車を降り、前方へと探しに行った。

このとき、空から小雨が降り始め、雨脚が次第に強くなる傾向があったが、彼はそれを気にも留めなかった。心を奪われた妖精さんに会えるなら、ずぶ濡れになっても喜んで受け入れるつもりだった。

この場所は図書館に近く、通りには人が多かった。突然雨が降り出し、みんな慌てて雨宿りする場所を探して走り回っていた。

厳谷究は妖精さんを探すのに必死で、そんなことは気にせず、雨の中あちこち見回して探し始めた。白い服を着ている人を見かけるたびに、必ず何度も見て、違うとわかると失望を隠せなかった。

突然振り向くと、白い影が急いで走っているのが見えた。彼女は道をあまり見ておらず、うっかり彼の胸に飛び込んできた。

彼の胸にぶつかった。

二人は同時に固まった！

「妖…妖精さん？」

厳谷究はまだ彼女の顔を見ていなかったが、彼女が白い服を着ているのを見て、外見から判断すると、かなり魅力的に見えた。もしかしたら自分が探している人かもしれない？