夜の10時、青木朝音が寝ようとしていた時、携帯が鳴った。
井上九:【うわっ、本当にお前なのか?朝音ちゃん、本当にお前?本当に戻ってきたのか?なんてこった、夢を見てるのかと思った。】
青木朝音:【……?今頃気づいたの?】
井上九:【ごめん、俺は反応が遅くて、ずっと夢を見てるのかと思ってた。まさかお前が本当に現れるなんて。この3年間、ろくに食べられず、ろくに眠れず、お前のことを考えすぎて頭がおかしくなりそうで……】
青木朝音:【ストップ!感傷的な話はもういいから、今ちょっと手伝ってほしいことがあるの。】
井上九:【何?】
青木朝音:【今週の日曜日に全国高校生数学コンテストが私たちの市で開催されるって聞いたんだけど、参加カードを一枚手に入れて送ってくれない?】
井上九:【そんな簡単なこと?もっと大変なことかと思った。こんなに久しぶりなのに、俺のこと恋しくないの?】
青木朝音:【…………】
井上九:【わかったよ、お前が俺に会いたがってるのはわかってる、俺もお前に会いたいよ。】
青木朝音:【……………………】
*
今週の木曜日、北川信望が青木朝音に電話をかけてきて、スタジオに来るように言った。曲と歌詞ができたから、彼女の意見を聞きたいとのことだった。
しかし朝音は用事があって行けないと言い、北川に直接MP3音声ファイルを送ってもらった。彼女はイヤホンをつけて、真剣に何度も聴いた。
聴けば聴くほど素晴らしく、聴けば聴くほど引き込まれ、血が沸き立つような感覚だった。しかも中国語版と英語版の2つのバージョンがあった。
一気に終末日の雰囲気に引き込まれ、自分がその勇者になったかのように、鎧を身につけ、城を攻めるゾンビの群れを一掃し、最後には勝利して帰還するような感覚だった!
さらに北川信望の声には不思議な魅力があり、低くて怠惰でありながらも力強く、まるで終わりのない磁気の渦のように、その中に溺れることを恐れながらも深く引き寄せられるような声だった。
しかし生き残りたいなら、断固として前に進まなければならない。後退すれば死あるのみ!
曲の中間部分は純粋なピアノ曲で、前回のあの方の演奏には及ばないものの、北川の演奏も決して劣らず、むしろ荒々しさが少なく温かみがあり、希望は絶望よりも常に大きいと信じさせてくれるものだった!