「私は古川松陰、名前で呼んでくれればいい。偉いなんてとんでもない、ただ何となく法律事務所を開いただけだ」
古川松陰の自信に満ちた話しぶりからは、教養の高さが窺えた。深みのある少しかすれた魅惑的な声は、まるで一枚の羽毛のように、青木朝音の心を優しく撫でるようで、電流が走るような、くすぐったいような、非常に魅力的で心地よい響きだった。
「古川松陰?」
青木朝音は呟きながら、この聞き覚えのある名前を必死に思い出そうとした。そして本当に思い出してしまい、思わず息を呑んだ。
噂によると、古川グループ傘下の古川法律事務所はアジア最大の法律事務所であり、古川松陰はアジア一の大金持ちで最も有名な弁護士だという。彼の資産価値はすでに数千億円を超えていた。
彼は簡単に案件を引き受けることはなく、特に難しくて彼の興味を引くものでない限り、気分次第で引き受けるかどうかを決めていた。しかし一度引き受ければ、絶対に負けることはない!