第64章 ロボット古川木

「私は古川松陰、名前で呼んでくれればいい。偉いなんてとんでもない、ただ何となく法律事務所を開いただけだ」

古川松陰の自信に満ちた話しぶりからは、教養の高さが窺えた。深みのある少しかすれた魅惑的な声は、まるで一枚の羽毛のように、青木朝音の心を優しく撫でるようで、電流が走るような、くすぐったいような、非常に魅力的で心地よい響きだった。

「古川松陰?」

青木朝音は呟きながら、この聞き覚えのある名前を必死に思い出そうとした。そして本当に思い出してしまい、思わず息を呑んだ。

噂によると、古川グループ傘下の古川法律事務所はアジア最大の法律事務所であり、古川松陰はアジア一の大金持ちで最も有名な弁護士だという。彼の資産価値はすでに数千億円を超えていた。

彼は簡単に案件を引き受けることはなく、特に難しくて彼の興味を引くものでない限り、気分次第で引き受けるかどうかを決めていた。しかし一度引き受ければ、絶対に負けることはない!

もう一つの言い伝えによると、彼は貔貅(ひきゅう)の生まれ変わりで、生まれながらの金運の持ち主で、入るだけで出ていかない、つまりお金がいくらでもあるという。

そしてこの「入るだけで出ていかない」というのは…彼が極度のケチだということを指していた。「ケチの神様」と呼ばれるほどだ。

どれほどケチかというと?

例えば今乗っているこのボロ車。こんなにボロボロなのに、よくも堂々と乗り回す勇気があるものだ。

青木朝音は無言で額に手を当て、間違いなく同一人物だと確信した。

古川松陰は青木朝音が自分を軽蔑していることを察したが、怒るどころか、むしろ堂々としていた。「私が稼いだお金は将来の妻のために取っておくんだ」

そう言いながら、彼は意味ありげに青木朝音を一瞥した。

青木朝音は驚いて眉を上げ、笑いながら言った。「それなら、あなたは将来の奥さんにはとても優しいのね」

「もちろんさ、男というものは自分の女性のためにお金を稼ぐべきだからな」

彼は正々堂々と、考えることなく言い、突然話を変えて、恥じることなく一言、「俺の女になることを考えてみないか?」

青木朝音:「……」

この人は頭がおかしいのではないか?

たった二度目の出会いで、こんな無礼な提案をするなんて?