その頃、天上の間クラブにて。
ビリヤードルームのドアが突然、誰かに蹴り開けられた。長身の影が全身に纏った怒りのオーラとともに、まるで激怒したライオンのように部屋に飛び込んできた。
「くそったれ!てめえこのクソ野郎!」と大声で罵った。
そう言いながら、何も考えずに拳を振り上げて殴りかかろうとした。腕の血管が浮き出るほど怒り狂っていたが、相手のボディガードにすぐに阻止された。
「おや、誰かと思えば、倫慶坊ちゃんじゃないか?」
宮北一馬はソファに悠々と足を組んで座り、赤ワインを片手に優雅に味わっていた。狐のような目は狡猾で邪悪な光を放っていた。
彼は来訪者を見て、傲慢に笑った。「君が雇ったビリヤードの名手が痔で大出血して半身不随になったって?ふん、来月の試合は俺の勝ちだな」
「気持ち悪いこと言うな!実力で勝負しろよ、いつも裏で汚いことばかりしやがって。殺してやるぞ!」
北川倫慶は目を血走らせ、胸が激しく上下し、まるで毛を逆立てたライオンのように、怒りを抑えきれない様子だった。
「四弟、落ち着け!」
北川蒼涼は異変に気づくとすぐに追いかけてきて、険しい表情で北川倫慶の腕を掴み、引き離そうとした。
北川倫慶は彼の手を振り払い、宮北一馬を睨みつけながら警告した。「お前がどうしても欲しがってるあの土地、絶対に手に入れさせないからな!信じないなら見てろよ!」
そう言い放つと、北川倫慶は怒りに任せて立ち去った!
北川蒼涼は宮北一馬に意味深な視線を一瞥しただけで、すぐに北川倫慶を追いかけた。
宮北一馬は恐れる様子もなく口をゆがめ、むしろ上機嫌でグラスのワインを一気に飲み干した。「宮本黛璃が来たか確認してくれ」
……
天上の間を出ると、北川蒼涼は北川倫慶の後ろをぴったりと付いていき、眉間にしわを寄せていた。四弟の狂躁症はますます悪化しているようだった。本来なら忘憂の匂い袋があれば彼の症状をうまくコントロールできたのに。
しかし匂い袋の効果は一年しか持たず、三年前に期限が切れてしまった。そして忘憂はこの三年間姿を現さず、新しい匂い袋を手に入れることができなかった。
北川倫慶の狂躁症は主に不眠と関係していた。彼はすでに三年間まともに眠れておらず、体調はどんどん悪化し、気性も荒くなる一方だった。