二人が去った後、一人のおばあさんがやってきた。身なりから裕福な人には見えなかった。値段を尋ねると、若者はさらに値段を下げ、50元だけにした。
おばあさんはしばらく迷った末、結局50元を取り出して買い、優しい顔で「ありがとう」と言うと、宝物のように匂い袋を大事そうに持って去っていった。
その後は誰も買おうとする人はいなかった。せいぜい値段を聞くか、嘲笑うだけで、若者が値段を5000元に上げたことで、多くの軽蔑や罵倒を受け、金に目がくらんでいると言われた。
店じまいをしようとしたとき、見覚えのある姿が走ってきて、興味津々に匂い袋を一つ手に取り、じっくり見て、小さな虎歯を見せながら尋ねた。「これは本当に忘憂の匂い袋なの?」
若者はうなずいた。「間違いありません」
北川麟兎の顔から笑みが消え、怖い表情を見せた。「嘘つき!これが本物なわけないでしょ?本物の忘憂の匂い袋はなかなか手に入らないんだから」
「まあ、本物かどうかより、効果があればいいんじゃない?」若者は突然ため息をつき、かなり諦めた様子で言った。
「つまり、この匂い袋は本当に効果があるの?不眠症も治せる?」
「はい」非常に確信した口調だった。
「いくらなの?」
北川麟兎は目を丸くして尋ねた。心の中では、安ければ一つ買おう、効果がなくても損はしない、でも高すぎたらやめよう、どうせ偽物だし、効果があるとは限らないと思っていた。
「あなたの好きなだけでいいよ」
若者の艶やかな桃花眼には笑みが漂っているようで、すぐに「いくらでもいい」と付け加えた。
北川麟兎は驚いて再び目を丸くした。なぜか、彼はその目に言い表せない親近感を覚えた。しかし、彼は確信していた、自分はこの男を知らないと。
「どういう意味?私がいくらって言ったらそれでいいの?じゃあ1毛(10銭)でもいい?」
この男は本当に変な感じがする。こんな商売の仕方をする人を初めて見た。
何か裏があるんじゃないだろうか?
「あなたの好きなように。あなたが喜ぶなら」
この間、宿題を手伝ってくれたお礼に、一つ無料であげてもいいじゃないか?
「あなたが言ったんだからね。ちょうど1毛持ってるから、ほら、あげる」