「もちろん偽物だって知ってるよ、でも効果があるかもしれないじゃない?どうせ安いし、たった10銭だよ」北川麟兎は堂々と言った。
実は内心では得意げだった。たった10銭で買えたなんて、効果がなくても大きな掘り出し物を見つけた気分だった。
「10銭?」
北川倫慶はますます嫌そうな顔をして、手に持っていたものをソファの下に投げ捨て、ウェットティッシュで手を拭いた。
こんなに安いものは、毒があるんじゃないだろうか?
「四兄さん、なんで捨てちゃうの?」北川麟兎は怒って目を丸くした。
北川倫慶はまた少しイライラし始めた。「バカなの?10銭のものがいいものであるわけないだろ?俺を毒殺したいのか?」
北川麟兎は納得しない様子で言った:「でも効果があるって言ってたよ、不眠症に効くって。だから買ったんだ」
「当たり前だろ?売る側が効果ないなんて言うわけないだろ?そんなこと言ったら誰も買わないよ」
北川麟兎は言葉に詰まり、頭をかきながら「好きにすれば。もう捨てちゃったんだし」と言った。
どうせ安いし、拾い上げる気にもならなかった。そして宿題をしに行った。まずお母さんの宿題を終わらせたが、自分の宿題はやる気が起きなくなった。そこで——
「北川木、宿題を終わらせてくれ」
彼はロボットに命令し、すぐに付け加えた:「終わったら電池をあげるよ」
北川木は無表情な顔で、少し不本意そうに「かしこまりました、麟兎様」と答えた。
彼はロボットだが、宿題をするのは嫌いだった。
しかし命令に逆らうことはできず、とても辛そうだった。
北川麟兎はだらしなくソファに寄りかかり、スマホを取り出してアサガオの詰将棋解答についての情報をチェックし、つぶやいた:「魔王あさねとアサガオが同一人物だって?一体誰なんだろう?」
隣の車椅子に座っていた北川和蒼は、彼の言葉を聞いて、薄い唇に浅い得意げな笑みを浮かべた。彼は五弟に、その人物がお母さんだということを教えるつもりはなかった。
突然何かを思い出したように、北川麟兎は心配そうにつぶやいた:「やばい、もうすぐ月例テストだ。お母さんの成績じゃ、絶対クラスの最下位になる。僕が代わりに受験できればいいのに」
「今回のテストはかなり厳しいの?」
北川和蒼は読んでいた犯罪に関する本を閉じ、顔を上げて、何気なく尋ねるふりをした。