第154章 松陰様の手品

厳谷究と向井涼太が権州第一高校へ向かう途中、ある車が別の車に途中で遮られるのを目撃した。

その後、厳谷究は自分の妖精さんが遮られた車から降り、非常に豪華で派手なブガッティ・ヴェイロンに乗り込むのを見たような気がした。

厳谷究は胸がドキリとした。「あの車は誰のだ?」

彼の妖精さんがなぜあの車に乗るのか?もしかして既に誰かが先手を打って彼の妖精さんに目をつけたのか?

そうだ、彼の妖精さんはあんなにも美しく優秀だから、きっと数え切れないほどの追っかけがいるはずだ!

この瞬間、厳谷究は慌てた。

かつてないほどの動揺と恐れを感じた。

長い指が無意識に拳を握りしめ、青筋が浮き出て、彼は心乱れながら言った。「あの車を追え。」

「了解、厳谷さんも心配しないで、もしかしたら彼女の家族かもしれないよ?見たところ、君の妖精さんはそう簡単な人じゃなさそうだ。」向井涼太は慰めるように言った。

「そうであればいいが。」

厳谷究は初めて少し自信を失った。誰かが彼女を奪おうとしていて、自分が勝てないのではないかと恐れていた。

一方、北川蒼涼たちの車の中では、三兄弟が怒り心頭だった。特に彼らから人を奪ったのは、彼らがあまり手を出せない人物だったからだ。さらに腹立たしいことに、青木朝音は強制されたわけではなく、自ら進んで車を降りたのだった。

「松陰様が俺たちの母上様に目をつけたんじゃないだろうな?」北川倫慶は歯ぎしりしながら言った。

北川和蒼は顔を暗くし、恐ろしいほどの憂鬱な雰囲気を漂わせていた。

北川蒼涼の表情も良くなかったが、どうすることもできなかった。結局のところ、松陰様はこの世界の支配者であり、天帝のような存在だった。彼らは彼に何もできないのだ!

考えるだけでもやるせなかった。

北川倫慶はまた密かに罵った。「俺はお前を兄弟と思っていたのに、お前は俺の母上様を奪おうとしている。俺の父親になりたいのか?絶対に許さない!」

ある日、古川松陰を父と呼ばなければならなくなるかもしれないと考えただけで、三兄弟は寒気を感じ、受け入れがたかった!

……

青木朝音が車に乗り込むと、古川松陰は今日自ら運転し、超絶クールな運転テクニックを披露した。さっき360度のドリフトを決め、かなり派手だった。