第208章 本物の忘憂の匂い袋

ある高級ガーデンヴィラの住宅地。

北川蒼涼は車から降りると、一軒の独立したヴィラへ真っ直ぐ歩いていき、インターホンを鳴らした。質素ながらも上品な装いの婦人が自ら彼を迎え入れた。

「蒼涼、今日はどうして時間があったの?」

もし青木朝音が今日ここにいたなら、この婦人が先日彼女から忘憂の匂い袋を買った人だと気づいただろう。

「林田おばさん、九斗を見に来たんです。最近元気にしてる?」

北川蒼涼の声は穏やかで、この家に慣れた様子から、この家族とはよく知り合いのようだった。

林田芸乃歩は珍しく笑顔を見せた。「元気よ。それにね、この前路上の屋台で買った匂い袋、効果が本当に良くて。彼は今毎晩ぐっすり眠れるようになったのよ」

「匂い袋?どんな匂い袋?」北川蒼涼は驚いた。

「ほら、九斗の部屋に行きましょう。見せてあげるわ」