「皆さん、気づきましたか?強化版の匂い袋こそが三年前のあの光る匂い袋と全く同じものです。明らかに、これこそが同じ人が刺繍したものなのです」
「光る刺繍なんて、初めて聞きましたし、初めて見る機会に恵まれました。これはあまりにも神秘的ですね!」
「皆さん、よく見てください。あれは単に光るムクゲの花だけではないようです。文字があるようです。私は『福』の字が見えたような気がします」
「私は『安』の字と『康』の字が見えました」
「私はなぜか二つの『寿』の字が見えるのですが?」
合わせると、まさに「福寿安康」ではありませんか?
余分な「寿」の字は、老人が持っていた匂い袋のものでしょう。他の三つの字が刺繍された匂い袋は、三年前に忘憂を買った人たちの手元にあるはずです。
そして新しいデザインの匂い袋の袋にはこの四文字が刺繍されていますが、光ってはいないものの、同じく錦繍で作られています。
今となっては、誰が本物の忘憂で、誰が偽物なのか、言うまでもありません。
「パッ」という音とともに、会場内の照明が再び明るくなりました。
参加者たちの興奮した気持ちはなかなか収まりませんでした。特に刺繍が好きな二人の婦人は、彼女たち以上に興奮している人はいないでしょう。
しかし、先ほど一つも買わなかったことを死ぬほど後悔していました。今となっては、まだチャンスがあるかどうかわかりません。
「これこそが本物の忘憂の匂い袋です。私は先ほど嗅いでみましたが、本当に心が清々しく、気持ちが晴れ晴れとしました!でも、オークションはまだ続けられるのでしょうか?一つ落札したいのですが」その婦人は切望するように青木朝音を見つめました。
青木朝音は容赦なく言いました。「申し訳ありませんが、先ほど皆さんには競り落とすための10分間を差し上げましたが、残念ながらあのお二人の紳士だけが落札されました。もう時間切れですので、販売はいたしません」
あのお二人の紳士と言ったとき、青木朝音は北川蒼涼と北川和蒼に一瞥をくれました。
忘憂の匂い袋は縁のある人にしか売らないものです。これらの人々がこの機会を大切にしなかったのなら、彼女を責めることはできません。