古川松陰は興味津々に歩み寄り、「何を笑っているんだ?俺が家事をしている姿に魅了されたのか?」
彼はそのまま彼女の隣に座り、片腕を軽やかにソファの背もたれに回した。
家事を終えたばかりの男性は、上着を脇に投げ捨て、薄手のシャツ一枚だけを着ていた。男性特有の清涼感とタバコの香りが混じった魅惑的な雰囲気が、青木朝音の鼻孔に侵入し、心を掻き立て、魅了した。
青木朝音は耳元が熱くなり、なぜか口が渇き、いらだたしげに男性を押しのけた。「離れて」
こんなに近くに座るなんて、彼女を誘惑して罪を犯させようとしているのか?
「顔が赤いぞ?俺に心惹かれたのか?」
古川松陰は何か面白いものを発見したかのように、悪戯っぽく笑い、また恐れ知らずに彼女の方に寄り添い、軽薄に彼女の顎に触れようとした。
青木朝音は我慢の限界に達し、急に立ち上がり、まるで逃げるようにトイレに向かい、「バン」という音を立てて扉を閉めた。
水道の蛇口をひねり、必死に顔に水をかけ、まるでそうすることで心の中で燃え上がる欲望の炎を消せるかのようだった。
顔を上げて鏡の中の自分を見ると、額の前の数本の髪が濡れて額に張り付き、少し狼狽えた様子に見えた。
彼女は本当に恋愛をするべきだと思った。そうしないと、いつも妄想ばかりして、発情期のようになってしまう。
忌々しい色気のある男、いつも意図的に彼女を挑発してくる。
本来なら彼女の自制心は強いはずなのに、なぜか男性の前に来ると崩れてしまい、いつも逃げ出すしかないようだ。
そうでなければ、彼女は本当に彼に飛びかかって食べてしまいそうだった。
まだソファに座っている古川松陰は、両腕を広げてソファに置き、楽しげに小さな歌を口ずさみ、時々トイレの方向を見やると、唇の端の笑みが思わず上がっていった。
どうやらもう少し頑張る必要がありそうだ。そうすれば青木朝音は彼の容姿と魅力に完全に陥落するだろう。
そしてその後、青木朝音は自然な流れで彼のガールフレンドになるだろう。
……
二日後、青木朝音は再び口髭の若者に変装した。北川蒼涼と約束していた通り、今日彼の弟の病気を治療するためだった。身分を明かさないように、林田芸乃歩が住んでいる花園マンションの入り口で待ち合わせることにした。