第266章 宴会に参加して顔を潰し正体がバレる(11)

「女神様、ごめんなさい。あなたが私を救うためでなければ、私はもう死んでいたかもしれません」

北川倫慶も目を赤くして駆け寄ってきた。彼はここ数日、忘憂の匂い袋を身につけており、以前と比べて顔色がかなり良くなっていた。この数日間、彼は本当によく眠れたのだ。これまでにないほど心地よい眠りだった。

毎晩、匂い袋を抱きしめて寝ることにすでに慣れていて、まるで自分の子供を抱くように、毎晩愛おしそうに撫でては大切にしていた。

北川蒼涼と北川和蒼、そして北川信望も急いで近づいてきた。彼女が無事なのを見て、兄弟たちは皆ほっと大きく息をついた。驚きでほとんど抜け出しそうになった魂が、ようやく戻ってきたのだ。

しかし、母上様はなんてすごいんだろう?詠春拳や太極拳まで使えるなんて?さっき木人樁を打っていた時は本当にかっこよくて、一目見ただけで武芸に長けた人だとわかった。

兄弟たちは皆誇らしく思い、青木朝音を見る目は尊敬の念に満ちていた。

彼らは来世でもまた母上様の息子になりたいと強く願っていた。

青木朝音は兄弟たちに安心させるような視線を送った後、すぐに竜田時雨に向かって歩み寄り、何気ない口調ながらも冷たさを含んだ声で問いただした。「なぜ彼を押したの?」

この「彼」が指しているのは当然、北川倫慶のことだ。

竜田時雨はすでに青木朝音を恐れていたが、強がって言い返した。「押してなんかいないよ。彼が自分でバランスを崩しただけだ」

「謝りなさい」青木朝音の声は冷たく厳しく、反論を許さない威厳に満ちていた。

「は?」

竜田時雨は自分が聞き間違えたかのような顔をした。結局のところ、彼は竜野家の三男坊で、傲慢な放蕩息子として育ってきたのだ。これまで誰も彼にこんな風に命令したことはなかった。

「このバカ息子、早く謝りなさい。間違ったら謝るものでしょう、わかる?」

竜野佳宝が恐ろしい形相で近づいてきて、彼の頭を強く叩きながら諭した。

「姉さん、なんでまた僕の頭を叩くの?あなたに叩かれて馬鹿になったんだよ」

竜田時雨は不満たっぷりに頭をさすりながら、最終的には不本意ながらも青木朝音と北川倫慶に謝罪した。

誠意はあまり感じられなかったが、この件はこれで終わりとなった。