「彼女を逮捕するだと?誰がお前たちにその権利と勇気を与えた!」
古川松陰は目の前の椅子を一蹴りで蹴り倒した。その激しさからいかに彼が怒り狂っているかが窺えた。木下進一が口を開く前に、彼はさらに続けた。「お前たちの上司を呼んで来い!このクソ野郎は仕事を辞めたいのか!」
木下進一とその部下たちは完全に威圧され、心の中で恐怖を感じ始めていた。副隊長である木下進一は少し落ち着いて、強がりながらも内心は怯えて言った。
「一体あなたは何者だ?!」
この言葉は自信なさげに発せられ、スタンガンを握る手さえも微かに震えていた。
古川松陰は冷笑し、怒りながら大股で前に進み、何の苦もなく木下進一の手からスタンガンを奪い取ると、素早く綺麗な背負い投げで彼を尋問テーブルに叩きつけた。
木下進一の腰はテーブルの角に強く打ち付けられ、痛みで大声を上げ、体を痙攣させた。彼は腰が折れるかと思った。
数人の部下は近づく勇気もなく、むしろ無意識に一歩後退し、恐怖の表情を浮かべていた。
古川松陰は素早く青木朝音に近づき、「カチッ」という音と共に、青木朝音の両手の手錠が外れた。
「どうして私だと分かったの?」
青木朝音はまだ女性の声に戻っておらず、低く掠れた男性の声で、痛む手首をさすりながら、眉を上げて尋ねた。
古川松陰の言葉は疑う余地がなかった。「お前の目は俺を騙せない。」
彼は断言できた。この世界で彼女の目ほど美しい目は他にないと。彼女の目はとても美しく、唯一無二だった。
たとえ彼女の変装術がどれほど巧みでも、彼は絶対に間違えるはずがなかった!
「早く彼らを捕まえろ!」
木下進一はこの時、腰の痛みも気にせず、ただ一つの考えしかなかった。彼らをここから無事に出してはならない!
その言葉が終わるや否や、太鼓腹の男が電光石火の速さで駆けつけてきた。彼は額の冷や汗を拭い、鋭く叱責した。「馬鹿な真似を!」
そして古川松陰に向かって腰を低くして言った。「申し訳ありません、古川様。あなたの方を逮捕してしまいました。しかし現状では、すでにネット上で広く知れ渡っています。この段階で釈放すれば、説明がつかなくなるでしょう。」
来た人物はこの地区を管轄する千田虎徹だった。連絡を受けるとすぐに駆けつけ、心臓が飛び出しそうになっていた。