第288章忘憂の大規模な正体バレ現場(11)

競売会のことを思い出すと、古川松陰はすぐに後悔した。もし彼も競売会場に行っていれば、男装した忘憂が彼の妻だと一目で分かっただろう。

ちょうどその機会に彼女の忘憂の匂い袋をすべて落札できたのに。

「匂い袋はまだあるの?」古川松陰は急いで尋ねた。

「欲しいの?あなたも眠れないの?」青木朝音は問い返した。

「欲しいよ」古川松陰は笑いながら、期待を込めて彼女を見つめた。

「あなたの態度が良かったから、一つあげる」というような言葉が聞けると思ったが、結果は…

「欲しいなら、安く一つ売ってあげるわ」

古川松陰の表情は一瞬凍りついたが、最終的に不本意ながら「いいよ」と一言だけ言った。

しかし結局、青木朝音は彼に一つ投げ渡したが、お金は取らなかった。

自分の親友から何のお金を取るのか、そんな他人行儀なことはできない。