第303章 全ての大物が出動、青木朝音に服を届ける（1）

裁判の時、実際に生中継を見ていた人数はそれほど多くなく、さらに生中継が終わるとすぐに忘憂に関するすべてのことが消えてしまった。

だから生中継を見た人たちだけが、忘憂がAsaと極光であることを知っていたが、彼女の本当の名前は知らなかった。

それにもかかわらず、このニュースは権州第一高校で瞬く間に広まり、多くの生徒の親たちが学校の門の前で待ち構え、青木朝音に忘憂の匂い袋を一つ譲ってもらうか、買おうとしていた。

青木朝音はこのような面倒を避けるために、ずっと身分を隠していたので、彼らが間違っていると言い、実際には自分は忘憂ではなく、おそらく忘憂に似ているだけだと言った。

結局あの日、青木朝音は男装のメイクをしていたので、彼女本来の容姿とは少し違っていた。みんなも忘憂がAsaと極光であると確信できず、ただ似ているように感じただけだった。

今、青木朝音が断固として否定するのを聞いて、彼らはしぶしぶ立ち去るしかなかった。

今日の最初の授業の時は天気がまだ良かったが、2時間目の授業が終わると、気温が急に下がり、雨は降らなかったが強い風が吹き始めた。

教室の生徒たちは寒さに震え、次々と家に電話をかけて親に服を持ってきてもらうよう頼んだ。こんなに寒い日には、少なくともダウンジャケットが必要だった。

みんなが電話をかけている中、青木朝音と後藤雪夜、そして北川麟兎だけが電話をしなかった。

北川麟兎は何も言わずに自分の上着を脱ぎ、青木朝音に掛けようとしたが、青木朝音に止められた。彼女の声はとても優しく、「大丈夫よ、私は平気だから、あなたが着ていて。風邪をひかないように」と言った。

おそらく彼女がこんなに優しく話すのを初めて聞いたからか、北川麟兎は口を開けて大きな笑顔を見せ、二本の小さな犬歯が輝いていた。彼は強引に服を彼女に掛けようとした。

「女神様、早く着てください。あなたが風邪をひいたら、僕は心配で仕方ありません」

この状況を見て、後藤雪夜もすぐに自分の上着を脱いだ。「朝音さんは私の服を着た方がいいわ。この服はとても暖かいから」

「二人とも、ちゃんと服を着なさい。さもないと怒るわよ」

青木朝音は冷たい表情を装い、目を危険そうに細めた。二人は怖くなって、不本意ながらも服を着直すしかなかった。