第362章　古川松陰は青木朝音がJキングだと知った（2）

古川松陰は目を細めて女性を見つめ、見れば見るほど見覚えのある感覚が押し寄せてきた。しかし青木朝音は意図的に声色を変え、彼に気づかれないようにしていた。声には冷たさと不遜さが隠されていた。「私の人にまで手を出すつもり？」

古川松陰は疑わしげに彼女を見つめた。「あなたが本当にJキング？北川和蒼はあなたの部下なの？」

青木朝音は北川和蒼を見やり、ちょうど視線が合った。彼女は頷き、反論の余地を与えない口調で言った。「もちろん」

「でも彼は私を殺そうとした」古川松陰の声は冷たく沈み、深い瞳からは怒りの炎が噴出しそうだった。

「それはあなたが私を見殺しにしたからよ。私が殺し屋に追われているのを知っていながら、私の生死を気にもかけなかった。私は九領全体に貢献した人間なのに、あなたはこうして恩を仇で返すの？」

青木朝音の冷たい声は一つ一つが非難の言葉だった。そして口調を変え、「彼が殺し屋を雇ってあなたを追いかけたのは、あなたが自業自得だからよ」

古川松陰：「……」

彼女の顔ははっきり見えなかったが、その口調と彼女のだらしない姿勢を見ると、どうしても自分の妻に似ているように思えた。

そう思った古川松陰は急に一歩前に出て、手を上げて彼女の仮面を引きはがそうとしたが、幸い青木朝音の反応は素早く、身をかわして避けた。

「何をするの、手を出さないで」青木朝音は目を細め、冷たい光が走り、鋭く男を射抜いた。

「仮面を取れ、一目見せろ」古川松陰は横暴に命じた。

「消えろ」

青木朝音は容赦なく言い放ち、北川和蒼の方へ歩み寄り、彼の後ろに回って車椅子を押そうとした。そして一言残した。「彼は連れて行くわ」

「仮面を取ったら行かせてやる」

古川松陰はしつこく、彼女の顔を見るまでは諦めなかった。今や彼女が自分の妻、青木朝音であることを八割方確信していた。

しかし、まだ二割の不確かさがあり、もし人違いだったら恥ずかしいことになる。

彼女の仮面を取り、顔を見て初めて安心できるだろう。

しかし、もしJキングが本当に自分の妻だったら、以前Jキングに嫉妬し、彼女の生死を気にするなと命じたことを考えると、彼は…罪深いことをしたのではないか？

古川松陰の心は急に慌てた。自分の死期が近いと感じた。