翌日の早朝、蘭の花に水をやっていた北川和蒼は、大勢の人々が押し入ってくるのを目の当たりにした。彼らは九領局の者だと名乗り、そのまま彼を強制的に連れ去った。
北川和蒼は歩くのが面倒だったので、車椅子に座ったまま彼らに押してもらって出て行った。
北川木は心配そうに彼らについて車に乗り込んだ。今日の指揮を執っていたのは古川木で、北川木は小声で彼に尋ねた。「兄さん、どうしたんですか?」
古川木は無表情で、正義感あふれる口調で言った。「彼は殺し屋を雇って私の主人を殺そうとした。」
北川木はなるほどと思った。そういうことか。
こんなに早く知られるとは?
それなら彼の主人は死ぬしかないのでは?
北川和蒼は落ち着き払っていて、まったく心配している様子もなく、手に持った本をめくりながら読んでいた。彼も九領局の人間だからこそ、このような待遇を受けられるのだ。
古川木は好奇心から本の表紙をちらりと見た。やはり犯罪心理学の本だった。天才の世界は理解できないと彼は思った。
同時刻、九領局の大広間。
古川松陰は黒い怒りの神のように、片足を組み、威厳に満ちた様子で中央の一人掛け椅子に座っていた。彼の目尻には赤みがさし、瞳の奥には恐ろしい冷たさが光っていた。車椅子に座って押されて入ってきた姿を見て、彼は冷ややかに笑った。
「こんな状況でも車椅子に座っているとは?本当に贅沢を楽しんでいるな。」
北川和蒼は彼を恐れている様子もなく、落ち着いて車椅子に座ったまま、立ち上がる気配もなく、むしろ自分の本を読み続け、古川松陰を無視するような冷淡な態度を取っていた。
「ふん、彼の車椅子を取り上げろ。」古川松陰は冷笑しながら命じた。
「ご主人様、早く立ち上がってください。」
北川木は心配そうに言った。このままだと誰かが主人を引きずり上げることになり、それは見苦しいだろう。
北川和蒼は聞こえないふりをして、ただ怠そうに目を上げ、軽やかな視線をゆっくりと古川松陰に向け、冷たくも美しい声で一言一言はっきりと言った。「彼は、殺されて、当然だ。」
北川木はびっくりして膝から崩れ落ちそうになった。主人、そんなに強気でいいんですか?今は強がるときじゃないですよ。
このままだと九領局の牢獄に入れられて、苦しむのはあなたですよ。
北川木はすっかり心配で胸がいっぱいになった。