第54章 黙れ(4)

森川記憶はまず布団を髙橋綾人の体にかけ、それから気ままに床に座り、救急箱から体温計を取り出して、髙橋綾人の脇の下に挿した。

彼女が手を引っ込める時、指先が偶然彼の胸に触れた。四年前と同じように、彼の肌は引き締まって力強く、灼熱の温度を帯びていた。

森川記憶の脳裏に、あの夜の彼と彼女が絡み合う情景が一瞬よぎった。彼女は全身がぶるっと震え、急いで手を引っ込め、服の襟で何度も強く擦った。指に残った髙橋綾人の感触が完全に消えるほど手が痛くなるまで、彼女はようやく止めた。

森川記憶は髙橋綾人の体温を測る間に、救急箱から解熱剤を取り出した。

一箱まるごと、まだ開封されていない。おそらく髙橋綾人は薬を飲む暇もなく、彼女のために玄関へ行ったのだろう。

森川記憶は説明書を詳しく読んでから、キッチンへ行って温かい水を一杯持って戻ってきた。

彼女は水を床に置き、再び彼の肌に触れないように、体温計を抜く動作は非常に慎重だった。

髙橋綾人は40度近い高熱を出していた。

森川記憶は急いで髙橋綾人に薬を飲ませた。幸い、熱でぼんやりしていても意識はあり、飲み込むことができた。唇の端からかなりの水がこぼれたが、薬は胃に入った。

説明書には、患者の熱が下がらない場合、4時間後に再度服用するようにと明記されていた。

選択肢があれば、森川記憶は本当に髙橋綾人と同じ部屋にいたくなかったが、幸い彼はずっと眠っていたので、彼女はかなり気楽だった。

夜は次第に更けていった。

森川記憶はスマホを長時間見ていたので目が疲れ、顔を上げて窓の外を見た。

室内は明かりがついていたので、床から天井までの窓は鏡のようになり、彼女は窓に映る自分と髙橋綾人の姿をはっきりと見ることができた。

彼女は彼の顔をじっと長い間見つめてから、視線を虚空に移した。彼女の表情にはあまり変化がなかったが、目の奥には淡い哀愁が漂っていた。

森川記憶はアラームをセットし、4時間後、髙橋綾人はまだ高熱が下がっていなかったので、彼女はまた薬を飲ませなければならなかった。

朝は早く起き、昼は橋本監督の会社に行ったため昼寝をしなかった彼女は、深夜12時を過ぎると次第に眠気を感じ始めた。