第47章 見える場所(7)

森川記憶が橋本監督の会社に到着したのは、午後3時だった。

彼女は予約をしておらず、会社のロビーに入るとすぐに、若くて美しい受付嬢に止められた。「お嬢さん、どなたをお探しですか?」

森川記憶は答えた。「橋本文新監督です。」

受付嬢は内線電話を取り、番号をダイヤルして、小声で二言三言話した後、電話を置き、礼儀正しい笑顔を浮かべて森川記憶に向かって言った。「お嬢さん、申し訳ありませんが、橋本監督はいらっしゃいません。」

橋本監督がいない?森川記憶は二秒ほど考えてから、質問を変えた。「すみません、伊藤芸さんは今も橋本監督の助手をされていますか?」

伊藤芸は橋本監督の助手で、以前彼女が『萬千の風華』の撮影現場にいた時、彼とはかなり親しかった。

「はい、そうです。」

「彼は会社にいますか?」