第71章 私が懐かしむのは、共に過ごした若き日々(1)

髙橋綾人はいつも感情を完璧に隠すことができたが、「あなたの兄、髙橋余光」というこの五つの言葉を聞いた時、彼の体は明らかに激しく震え、足取りさえも乱れた。

彼はさらに少し前に進んでから、ようやく立ち止まった。

彼は千歌に背を向けたまま振り返らなかったので、千歌は彼の表情を見ることができなかったが、彼のシルエットを通して、彼の背中が緊張で強張っているのを感じ取ることができた。髪の毛のわずかな揺れが、彼の全身が微かに震えていることを物語っていた。その様子は、内に渦巻く激しい感情の波を必死に抑えているかのようだった。

しかしすぐに、彼は気持ちを整え、まるで千歌の言葉を聞かなかったかのように、再び足を上げて立ち去った。

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髙橋綾人は車を運転し、映画スタジオの門に到着する前に、フロントガラス越しに門の前でタクシーに乗り込もうとしている森川記憶の姿を見た。

タクシーのドアはすぐに閉まり、ゆっくりと走り出した。

映画スタジオの門を出ると、髙橋綾人はタクシーが去っていく方向をじっと見つめ、少し躊躇した後、軽くアクセルを踏み、ハンドルを回して後を追った。

映画スタジオは南郊外にあり、映画大学に行くには京都市内の半分以上を横断する必要があった。午後の道路はそれほど混んでいなかったが、車の速度は速くなったり遅くなったりした。西二環に到着したとき、髙橋綾人は森川記憶が早めに主要道路から出るのを見て、急ブレーキを踏んだ。後ろの車から不満げな警笛が鳴り響いたが、気にせずハンドルを切って主要道路から出た。

約5分ほど走ると、髙橋綾人は森川記憶がどこに向かっているのかおおよそ見当がついた。

少し古めかしい通りを二本通り過ぎると、髙橋綾人は遠くからタクシーが確かに南鑼鼓小路の入口に停まっているのを見た。

髙橋綾人が近くに車を停めた頃には、森川記憶が乗っていたタクシーはすでに姿を消していた。髙橋綾人は足早に南鑼鼓小路に入り、左右を見渡しながら約50メートルほど進んだところで、ようやく森川記憶の姿を見つけた。

彼は彼女に近づいて邪魔をすることはせず、遠すぎず近すぎない距離を保ちながら後をついていった。

午後の陽光は明るく暖かく、通りの風情を一層引き立てていた。