第86章 最近元気?嘘はやめよう (6)

彼女の何気ない愚痴が、彼に密かに学ぶ決意をさせた。他でもない、ただ彼女の役に立ちたいという思いからだった。

その後の彼は、確かに彼女の助けになった。母親はほぼ毎日彼女を家に夕食に招き、彼女はたいてい彼の家で宿題をしていた。彼は彼女が書斎にいない時に、こっそり忍び込んで彼女の教科書を開き、重要なポイントに印をつけて、彼女の学習の負担を軽くしようとした。

高校2年生で文系と理系に分かれ、髙橋綾人と森川記憶は共に理系だった。髙橋綾人は高校1年生の時に成績が急速に上がったため、彼と彼女は同じクラスになった。

彼と髙橋綾人の席は遠く離れており、二人はやはり交流がほとんどなかった。

しかし一中の高校2年生は、高校1年生よりも学習負担が増え、夜の自習が始まった。毎晩9時半、森川記憶は一人で自転車に乗って帰宅していた。

その年の夏の10月初め、隣の学校から悪いニュースが伝わってきた。ある女子学生が夜、下校途中に数人の酔っぱらった男たちに集団レイプされたという。

髙橋綾人はこのような乱雑なニュースに関心を持たなかったが、このニュースが彼の耳に入ると、即座にデブに毎晩二人を派遣して森川記憶を遠くから見守り、彼女を家まで護衛するよう命じた。

髙橋綾人はこのようにデブたちの前で、表立って、また陰ながら森川記憶のために多くのことをしてきた。あまりにも多くのことをしたため、彼と森川記憶の間にほとんど交流がないのを見ていた仲間たちは、次第に不満を感じ、割に合わないと思い始めた。

その不満と割に合わない思いは、ある学校行事で爆発した。

常に優秀な学生だった森川記憶は、その学校行事で出し物を申し込み、学生会長と一緒に歌を歌うことになった。

プレッシャーが大きかったため、森川記憶と学生会長の練習は夜の自習後に行われ、そのため髙橋綾人が毎日手配した二人の護衛は、森川記憶が練習する教室の外で待機し、練習が終わるのを待っていた。

窓越しに、髙橋綾人の部下たちは森川記憶と学生会長が談笑する様子をいつも見ていた。

その光景は、髙橋綾人の仲間たちの目には非常に刺激的だった。彼らのボスが気に入った女性なのに、ボスが心を尽くして彼女に良くしているのに、彼女はボスに会っても笑わず、痩せこけた学生会長に対してこんなに楽しそうに笑うなんて?