デブは小学校の頃から髙橋綾人と知り合いで、中学1年生の時に髙橋綾人が「天下を取る」時、デブはずっと彼の側に「離れずについていた」。
これほど長い間、デブは髙橋綾人がどの女性にも良くしているところを見たことがなかった。いや、正確に言えば、まともに見向きもしなかった。
森川記憶が最初の一人であり、デブが知る限り最後の一人でもあった。
何年経っても、誰かが「男が女にどう接すれば良いか」という話題を出すと、デブの頭には必ず「綾人さん」の姿が浮かぶ。本当に、彼は生涯で一人の男が一人の女にここまで一途に心を尽くす姿を見たことがなかった。
デブはずっと、髙橋綾人が彼らのグループに開心ネットカフェで「大々的に秘密裏に」森川記憶を守らせていたのが十分だと思っていた。しかし後になって、それはほんの始まりに過ぎなかったことを知ることになる。
竹田章の一件があってから一ヶ月後、中学1年生の頃から一度も教科書を見たことも宿題をしたこともなかった髙橋綾人が、真面目に勉強し始めた。
髙橋綾人の隣の席に座っていたデブは、髙橋綾人がただ遊びでやっているだけだと思っていた。しかし週が過ぎ、また週が過ぎ、髙橋綾人は中間テストで学年の100位以内に入った。そのとき初めてデブは、綾人さんが遊びではなく、本気だということを知った。
デブは髙橋綾人に尋ねた。「綾人さん、一中のボスになった後は、一中の学業エリートも目指すの?」
数学の教科書をめくっていた髙橋綾人は、淡々とした口調でデブに答えた。「違う」
違う?じゃあなんでこんなに勉強に打ち込んでるんだ?デブがそう尋ねる前に、髙橋綾人はさらに言った。「ある人を助けたいんだ」
「ある人を助ける?誰を?」
髙橋綾人は答えなかった。
当時のデブは、後のデブとは違って、髙橋綾人のすることすべてが「森川記憶」という二文字のためだということを理解していなかった。彼は質問を続け、髙橋綾人がイライラして本で彼の後頭部を強く叩くまで続けた。それでようやく大人しく黙った。
髙橋綾人は頭が良かった。真剣に勉強を始めた彼の成績は恐ろしいほど急上昇し、期末試験では学年の20位以内に入り、森川記憶の5つ下の順位だった。
そして高校1年生の前期が終わり、みんな冬休みに入った。春節を過ぎ、高校生活の第2学期が始まった。