その夜、髙橋綾人は一人でカラオケボックスでたくさんのお酒を飲み、長い間タバコを吸っていた。彼がみすぼらしい姿で家に帰ったとき、ちょうど森川記憶が眠っている髙橋余光に毛布をかけているところだった。彼女が余光の部屋から出てきたとき、彼とばったり鉢合わせた。彼女はまだ怒っていて、以前のように礼儀正しくも冷たく「高橋くん」と呼ぶこともなく、ただ無視して髙橋余光の寝室のドアを閉め、彼の肩をかすめて、振り返ることもなく立ち去った。
あれは彼と彼女の初めての冷戦だったのだろう。丸々半月続いた。その半月の間、彼の気分は最悪で、一度も笑顔を見せなかった。以前なら授業が終わるとすぐに集まってくる仲間たちも、その期間はできるだけ彼から離れていた。うっかり巻き込まれないようにと恐れていたのだ。