彼はデブに目配せをすると、デブはすぐに前に出て、竹田章の襟首をつかんで引きずっていった。
校庭にいた全ての人々は、森川記憶を含め、先ほどの光景にまだ呆然としていた。
白いシャツに真っ赤な血を浴びた髙橋綾人は、陽光の中で、じっと森川記憶を見つめしばらくしてから口を開き、「彼は二度とお前を悩ませることはない」と言い、少し間を置いて、まるで先ほどの言葉では足りないと思ったかのように、「これからは誰もお前を悩ませることはない」と付け加えてから、背を向けて去っていった。
その日の出来事は大きな騒ぎになった。学校内で手を出したわけではなかったが、それでも学校の指導部を動かすことになった。
髙橋綾人は再び両親を呼ばれ、再び大きな処分を受け、再び一ヶ月間学校のトイレ掃除を命じられた。