第151章 私と条件を交渉する資格があるのか?(1)

「もし資金が調達できなければ、撮影が始まらず、彼は契約違反になってしまう。他の投資家たちは必ず彼に賠償を求めるだろう。そうなれば彼は破産するだけでなく、訴訟まで抱えることになるかもしれない!」

「彼は最近、このことで頭を悩ませているはずだ。私の知る限り、彼は自分が持っていた株やファンドを売っただけでなく、今は家や車まで売ろうとしている。おそらく資金の穴埋めをしようとしているんだろう……」

なるほど、事態は彼女が想像していたよりもずっと深刻だったのか……森川記憶の思考は少し遠くへ飛んでいった。

鈴木達が独り言のように長く話した後、電話の向こうの森川記憶がしばらく声を出していないことに気づいた。彼は電波が切れたのかと思い、まず携帯の画面を確認すると、通話はまだ続いていた。そこで「もしもし」と声をかけた。「記憶ちゃん、まだ聞いてる?」

「うん……」森川記憶は無意識に一言返し、それから急いで思考を整理して続けた。「……聞いてるわ」

彼女の返事を聞いた鈴木達は、電話の向こうでため息をついた。「実は綾人さんの陰口を叩くつもりじゃなかったんだ。ただ彼が大変な思いをしていると思って、君に話したかっただけなんだ。先日彼が私を訪ねてきたとき、タバコを次から次へと吸っていて、本当に悩んでいる様子だった。思わず、この映画の権利を他の人に譲るか、髙橋家に助けを求めて妥協し、家業を継ぐことを提案したんだ。彼がなんて言ったと思う?」

「彼はこう言ったんだ……」鈴木達は少し感情を整えて、髙橋綾人の口調を真似て話し始めた。「……無理だ。やっとここまで来て、彼女にこんなに近づいたのに、こんな形で諦めるわけにはいかない!」

「彼の言う『それ』とは、監督としての夢のことだろうね。結局、彼は今、監督界でもある程度の成功を収めているわけだし……」

彼女の知らないところで、彼はこんなにも多くのプレッシャーを抱えていた。そして、そのプレッシャーの源は彼女だった。

もし最初に彼女が林田正益とあんなことにならなければ、林田正益は投資を引き上げることもなく、髙橋綾人も今のような状況にはならなかっただろう。