彼が本当に彼女を信じているなら、彼女の説明など必要ないはずでは?
森川記憶は、自分が今にも口にしかけた言葉が、急に馬鹿げて思えた。
結局、自分が優しすぎるのだ。あの夜、彼が林田正益の手から自分を連れ帰ってくれたことで、彼に対する見方が変わり、さらには彼の知らなかった過去の話を聞いた後、彼に対して罪悪感を抱き、心を痛めてしまった。
それどころか、林田正益が自分に良からぬ考えを持っていると知りながら、あの録音を持って虎穴に飛び込んだのも、彼が失った投資を取り戻すためだった。
彼女はこれまで誰のためにも、あんなに頭を下げて酒を飲まされたことはなかった。事故で目覚めた後でさえ、不正な手段で芸能界に復帰しようとはせず、チャンスを求めて半年も辛抱強く待っていたのに。
森川記憶の心の中の感情は、一気に複雑になった。