第172章 億万の星も彼女には及ばない(2)

「見てよ、どうして忘れてたんだろう、高橋社長は言ったわ、私と寝るだけでも十分気持ち悪いって、4年前に一度あったけど、それだけで高橋社長は吐き気がするほどだったって!」

髙橋綾人の体が硬直し、数秒後になってようやく反応した。これらの言葉は、かつて彼女に向けて自分が言ったものだった。

「高橋社長はこうも言ってたわ、たとえ私が服を全部脱いで、高橋社長の前に立っても、高橋社長は私に少しの興味も持てないって!私が間違ってたわ、さっきあんな分不相応なことを言って、高橋社長を侮辱するなんて……」

森川記憶は一言一言「高橋社長」と呼び、かつての髙橋綾人の言葉を使って彼を激しく反撃し、彼は一言も返せなくなった。

髙橋綾人は胸の中の炎がいつ爆発してもおかしくないと感じた。自分の残りわずかな理性さえ失うのではないかと恐れ、必死に自制しようとしたが、抑えれば抑えるほど心の奥が痛んだ。彼は大変な努力をして、やっと「黙れ」という言葉を絞り出した。