第175章 億万の星も彼女には及ばない(5)

しかし彼は何をすればいいのだろう?

一瞬前まで何かしなければと必死に考えていた髙橋綾人は、次の瞬間に自分の車を見つけると、考えることなくドアを開けて座り込み、アクセルを踏み込んで地下駐車場から飛び出し、大通りに乗って、目的もなく市内をぐるぐると走り回り始めた。

自分がどの道を走っているのか、速度がどれくらいなのかも分からなかった。ただ赤信号が点くと止まり、青信号になると進む。まるで思考のない操り人形のように運転し続け、車のガソリンが切れて強制的に止まるまで、彼は気づかなかった。ただひたすらアクセルを踏み続け、足の裏が痛くなるまで踏み続けて、やっと眉をひそめ、少し我に返り、下を向いてメーターを見ると、ガソリンが切れていたのだった……

午後に給油したばかりなのに……髙橋綾人はそう考えながら、ゆっくりと顔を窓の外に向けると、夜の闇が深く広がっていた。

彼はようやく慌てて車の時計を見ると、すでに深夜12時近くになっていた。

彼は一人で車を運転し、京都市内をほぼ3時間も無目的にさまよっていたのだった。

手を上げて、長時間の運転で痛む眉間をさすり、そしてポケットからタバコを取り出して口にくわえ、火をつけたが吸わずに指の間に挟み、タバコがゆっくりと燃えるままにした。

窓は閉まっていて、タバコの煙がすぐに彼の周りに充満し、緊張していた気持ちが少し和らいだ。そこで彼は携帯を取り出し、保険会社に電話をかけて、給油に来てもらうよう頼んだ。

電話を切ると、髙橋綾人は車の背もたれに身を預け、窓の外のぼんやりとした夜景を見つめながら、一本また一本とタバコに火をつけた。

一箱のタバコが最後の一本だけになったとき、彼は手を伸ばして助手席から携帯を手探りで取り、顔の前に持ってきた。

WeChatには多くの未読メッセージがあった。

開いてみると、最初に目に入ったのは1時間前に山崎絵里が送ってきたメッセージだった。

「高橋先輩、記憶ちゃんは今朝起きてから学校を出て、今までまだ寮に戻っていません。」

「彼女に電話をかけましたが、出ませんでした。10時半に彼女のお母さんが彼女を探して寮に電話してきて、彼女の携帯に誰も出ないと言っていました。お母さんが心配しないように、適当な言い訳でごまかしておきました。」