第182章 彼女の手の中のボイスレコーダー(2)

彼女は学校にもいないし、家にも帰っていない。友達のところに行ったのだろうか?

彼はこの数年間ずっと彼女の動向に注意を払っていた。彼女は三年間昏睡状態にあり、目覚めた後は以前連絡を取っていたほとんどの人との関係が疎遠になっていた。今でも連絡を取り合っている人はほとんどいなかった……

髙橋綾人が最初に思いついたのは鈴木達だった。しかし彼が鈴木達に電話をかけ、まだ森川記憶が彼のところに行ったのかどうか尋ねる言葉を考えている間に、電話の向こうから丁寧な女性の声が聞こえてきた。「申し訳ありませんが、お客様、飛行機がまもなく離陸しますので、携帯電話の電源をお切りください」

鈴木達はまずCAに丁寧に「すぐに」と答え、それから髙橋綾人に話し始めた。「綾人さん、何かありましたか?和歌山に出張に行くところなんです。急ぎでなければ、着いてから連絡します」