第182章 彼女の手の中のボイスレコーダー(2)

彼女は学校にもいないし、家にも帰っていない。友達のところに行ったのだろうか?

彼はこの数年間ずっと彼女の動向に注意を払っていた。彼女は三年間昏睡状態にあり、目覚めた後は以前連絡を取っていたほとんどの人との関係が疎遠になっていた。今でも連絡を取り合っている人はほとんどいなかった……

髙橋綾人が最初に思いついたのは鈴木達だった。しかし彼が鈴木達に電話をかけ、まだ森川記憶が彼のところに行ったのかどうか尋ねる言葉を考えている間に、電話の向こうから丁寧な女性の声が聞こえてきた。「申し訳ありませんが、お客様、飛行機がまもなく離陸しますので、携帯電話の電源をお切りください」

鈴木達はまずCAに丁寧に「すぐに」と答え、それから髙橋綾人に話し始めた。「綾人さん、何かありましたか?和歌山に出張に行くところなんです。急ぎでなければ、着いてから連絡します」

「一人で?」髙橋綾人はさりげなく尋ねた。

「もちろん一人ですよ、今の私の地位では……」

「特に用事はないよ、飛行機を降りてからにしよう」ここまで聞いた髙橋綾人は、森川記憶が彼と一緒にいないことを知り、淡々とした口調で鈴木達の言葉を遮り、別れを告げて電話を切った。

髙橋綾人は携帯を手に、様々な手段で森川記憶とまだ連絡を取っている他の人々にも一人ずつ連絡を試みた。皆、自分の仕事に忙しいか、海外旅行中だった。

つまり森川記憶は……友達のところにも行っていないのか?

彼女の携帯はまず繋がらず、その後電源が切れた状態になった。何か問題が起きたのだろうか?

髙橋綾人の頭には、最近携帯で見たニュースが浮かんだ。ある大学生がタクシーに乗って事件に巻き込まれ、48時間行方不明になった後に発見された。女子大学生は人里離れた場所で見つかり、すでに命を落としていた。

彼は携帯を握る指に突然力を入れ、その後落ち着きなくアクセルを踏み、片手でハンドルを操作しながら、京都市内をあてもなく走り回り始めた。

時間は少しずつ過ぎ、髙橋綾人が車の燃料がまた少なくなっていることに気づき、近くのガソリンスタンドに停車した時、すでに午後になっていた。

彼は携帯を取り出し、山崎絵里にメッセージを送った。「彼女は学校に戻った?」