空が真っ暗になり、タバコの箱も空になった頃、髙橋綾人はようやく疲れ果てて後ろに二歩下がり、一本の木に寄りかかった。
彼は携帯を取り出し、何度目かわからないが彼女に電話をかけた。しかし、相変わらず電源が切れている状態だった。その後、山崎絵里にメッセージを送ったが、返事はまだ学校に戻っていないというものだった。
彼女は友達と一緒にいるわけでもなく、彼は彼女がよく行く場所を一日中回ったが、彼女の姿は見つからなかった……まさか京都市内を離れたわけではないだろう?
髙橋綾人はそこまで考えて、急に通話履歴を開いた。秘書の電話番号を探し、ダイヤルしようとした。秘書に森川記憶の最近のフライトや新幹線を調べてもらおうと思ったが、指が画面に触れる前に、携帯は「バッテリー残量不足」の警告を表示した。
髙橋綾人は指で挟んでいた最後のタバコの吸い殻をゴミ箱に捨て、体を起こして車に向かった。ドアを開け、車の収納ボックスで携帯の充電器を探していると、視線が偶然そこに置いてある携帯電話に止まった。
これは髙橋余光の携帯だ……髙橋余光……
この三文字が髙橋綾人の頭をよぎると同時に、充電器を探す動きが突然止まった。
なんて不注意だったのだろう?あらゆる場所を探したのに、どうして彼が髙橋余光の身分で彼女のために用意した「新居」を思いつかなかったのだろう?彼女は余光さんにいつも頼っていた。彼女はそこにいるのではないだろうか?
髙橋綾人の心の中の考えがまとまらないうちに、彼は車に身を乗り出して座り、アクセルを踏み込んで走り去った。
車がしばらく走った後、髙橋綾人は突然、もし彼女が本当にそこにいるなら、この姿で行くのはよくないと思い、前方の交差点で曲がり、まず自分の家に戻った。
バスルームで丁寧に入浴し、更衣室の一番下の引き出しから髙橋余光の服を見つけて着た。ここ数年ほとんど手首から外したことのない赤い紐を外し、髙橋綾人は鏡の前で自分をじっくりと観察し、何も不自然なところがないことを確認してから、髙橋余光の携帯を持って急いで出かけた。
髙橋綾人はタクシーを拾い、髙橋余光の身分で彼女のために用意したマンションへ直行した。
建物の下に着くと、髙橋綾人は料金を支払い、おつりも受け取らずに大股で建物に入った。