第190章 彼女の手の中のボイスレコーダー(10)

その中の一連の通知は「10086」からの不在着信通知で、母親からのもの、山崎絵里からのもの、髙橋余光からのもの、林田正益からのもの、そして...髙橋綾人からのものがあった。

森川記憶は各人の不在着信通知を見るたびに、メッセージを返して無事を報告していた。

髙橋綾人は森川記憶が寝室から出てきた時から、ニュースから彼女に注意を向けていた。彼女が携帯を見続けている間、彼は目の端で思わず彼女の方を時々チラチラと見ていた。

彼は彼女のすぐ隣に座っており、視力が良かったので、彼女の携帯画面の文字をはっきりと見ることができた。

彼は特に彼女が誰と会話しているかを見ようとはしなかったが、断片的に目に入った文字から、彼女が昨日電話をかけてきた人たちにメッセージを返していることがわかった。

彼が再び視線を彼女に向けた時、彼女の携帯画面に「髙橋綾人」という三文字が表示されているのを見て、無意識に全ての注意を彼女に集中させた。