そうだね、林田正益はプライベートでどう遊んでも構わないが、録音の中のこれらの言葉は、他人の手に渡ってはならないものだ。もし本当に暴露されたら、必ず厄介なことになるだろう。
彼が森川記憶に対して大胆に新しい条件を提案したのも納得だ。彼女の手にある録音を取り戻すためだけに。
林田正益はビジネス界で長年活躍し、今日の地位まで来られたのは、極めて抜け目がないからだ。森川記憶が林田正益をこのように言いなりにできるのは、美貌だけではあり得ない。だから彼女の手にあるこのボイスレコーダーこそが鍵なのだ……
この考えが髙橋綾人の心をよぎると同時に、この二日間に起きたすべての出来事が彼の頭の中で素早く駆け巡った。
昨夜、森川記憶と林田正益は一緒に夕食を取った。
その夜、林田正益はすぐにYC会社に連絡し、『三千の狂い』に再投資しようとした。