第188章 彼女の手の中のボイスレコーダー（8）

彼が彼女の携帯電話を置いた時、彼女の画面にメッセージが飛び込んできた。

彼は無意識に下を向き、彼女の携帯画面を一瞥すると、ロック画面にメッセージの内容がはっきりと表示されていた。

林田正益からのものだった：「記憶ちゃん、一日中電話をかけていたのに、どうして出ないの？」

林田正益も一日中森川記憶に連絡を取っていたのか？

髙橋綾人の眉と目が少し冷たくなった。彼が視線を外そうとした時、手に持っていた携帯がまた一度震えた。

やはり林田正益からのメッセージだった：「記憶ちゃん、『三千の狂い』の投資について、私は髙橋綾人と話し合ったよ。本当に君の言う通りにしなかったわけじゃないんだ。既存の投資に20パーセント追加することを提案したんだけど、髙橋綾人が承諾してくれなかったんだ。考えもせずに否決されてしまった。今朝も人を派遣して交渉しようとしたけど、向こうは返事すらくれなかったし、対応する人もいなかった。この状況はどうしたらいいのか...」