第187章 彼女の手の中のボイスレコーダー（7）

髙橋綾人の眉間が少し緩んだ。彼は文字を打つことなく、寝室のドアの外を指さした。

森川記憶は彼のこの仕草が、夕食の準備ができたから食べに来るようにと伝えていることを理解し、「トイレに行ってから食事します」と言った。

髙橋綾人は軽く頷くと、先に寝室を出て行った。

彼が料理をテーブルに並べ終わったとき、森川記憶はちょうどダイニングのドア口に現れた。

彼は手早く森川記憶のために椅子を引き、彼女に座るよう促しながら、もう一つの椅子も引いて自分も腰を下ろした。

彼はお粥を一杯よそって、森川記憶の前に置いた。

森川記憶はお礼を言った。

昨夜から今まで何も食べていなかった森川記憶は本当に空腹だった。彼女はスプーンを手に取り、お粥をかき混ぜてから黙々と食べ始めた。お腹が半分ほど満たされると、やっと食事のペースを緩め、顔を上げて隣でゆっくりと食事をしている「髙橋余光」を見た。そして突然、髙橋余光はいつも名古屋にいるはずだと思い出し、疑問に思って声に出した。「余光さん、どうして今日突然京都に来たんですか？」