第186章 彼女の手の中のボイスレコーダー(6)

彼女は暇なのに、なぜ録音ペンを握っているのだろう?

髙橋綾人の心に疑問が湧き上がった。彼は尋ねようと思ったが、結局我慢して、ただ眉をしかめるだけで何も気づいていないふりをして、寝室を出た。

髙橋綾人はまずお粥を鍋に入れ、強火で沸騰するのを待つ間に、ダイニングの収納棚から黒砂糖を取り出し、お湯を注いで、それを持って寝室に戻った。

森川記憶は眠っておらず、ベッドの頭に寄りかかって、バッグから充電器を探していた。

彼女はドアが開く音を聞いて、本能的に顔を上げ、入口の方を見ると、ちょうど入ってきた髙橋綾人と目が合った。

彼と彼女は約3秒間見つめ合い、森川記憶は素早く視線を落とし、見つけた充電器をコンセントに差し込み、スマホに接続した。

森川記憶が一瞬前にスマホを置いたとたん、次の瞬間には髙橋綾人がベッドの横に立っていた。