第185章 彼女の手の中のボイスレコーダー（5）

彼女の涙で彼の手がびしょびしょになっても、彼女はまだ泣き続けていた。

どうしようもなくなった髙橋綾人は、軽くため息をつくと、床に座り込み、手を伸ばして彼女を壁の隅から自分の前に引き寄せた。彼女の小さな体を自分の腕の中に収め、先ほど彼女の涙を拭いていた手で、今度は優しく彼女の背中をさすりながら慰めた。

彼の抱擁に、彼女の体は一瞬硬直し、少し逃れようとする素振りを見せたが、彼が腕の力を少し強めると、彼女は抵抗するのをやめた。

彼女は彼の抱擁に慣れていないのか、体がやや硬かったが、おそらく彼が彼女の背中をさする動作があまりにも甘やかすようだったため、しばらくすると彼女の体は徐々に緩み、彼の胸に顔を埋めて、思い切り声を出して泣き始めた。

髙橋綾人は彼女が泣くままにさせ、自分のシャツが彼女の涙で濡れても、彼女の声が嗄れるまで、ずっとそのような優しい抱擁の姿勢を保ちながら、彼女に寄り添っていた。